『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
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[『おくりびと』が米アカデミー外国語賞を獲った明快な理由と、その問題点]

2009-02-25 21:55:10 | 保守の一考
☆・・・やあ^^; 実は今、我が家は、屋根をリフォームしてもらっているのだが、修理屋さんが、我が家の壁面をつたうキウイの蔓を伐採している時に、電話線を切ってしまったのだ。

 故に、我が家は二日間、ネット環境になかった・・・。

 だから、今となっては旧聞の、『おくりびと』米アカデミー外国語賞受賞についてもの申したい。

 ・・・遅れているエントリー[社員昇格試験]の続きを書いてもいるのだが、それはニ,三日後にです^^;([社員昇格試験(前篇)]はクリック!)

 では、先ず、私の映画『おくりびと』についてのエントリーを読んで欲しい。

     [映画『おくりびと』を観た](クリック!)

 ・・・はい、私の、この作品へのスタンスはこの時と全く変わっていない。

 では、映画『おくりびと』が米アカデミー外国語賞を獲った明快な理由について記す。

   ◇

 以下の作品の1エピソードについて語りたい。

 それは、松本零士の『銀河鉄道999』の<霧の葬送惑星>の巻だ。

 『銀河鉄道999』についての説明は省く(もし知りたければ、上部のタイトルを『Wikipedia』とリンクさせたのでクリックして!)、

 ・・・<999>号が、その時に着いたのは、<葬送惑星>であった。

 鉄郎は、メーテルに、「ここではこの布をまとうのよ」と黒い布を渡される。

 「これじゃあ、お葬式みたいだよ^^」と鉄郎。

 駅の上空に降りていくと、線香の匂いが漂ってくる。

 ムードたっぷりの霧の町には、教会の鐘の音が響き渡っている。

 地上には、黒い服(喪服)の人々・・・。

 その黒い服の者たちは、空から駅に降りていく銀河鉄道に毒づく。

   「なんという不謹慎な!!」

   「死者の霊魂を何と思っているのかしら!!」

   「地獄へ落ちるがいい」

 そして、到着後、鉄郎とメーテルは、この星に下りる。

 メーテル:「この星では笑っちゃ駄目よ。人とすれ違ったら、とにかく、頭を下げて・・・」

 鉄郎:「こんな星、わざわざ降りなくても良かったのに・・・」

 そして、二人は、葬列とすれ違う・・・、と、その時、葬列者たちが一斉に振り返り、二人に銃口を向け、撃ち始めるのだった。

 逃げる二人。

 鉄郎:「なんだ?」

 メーテル:「私たちを殺す気よ」

 鉄郎:「なんで?」

 ・・・かくして、二人は倒れた壁の土砂に埋まり気を失う。

 葬列の者たちは、そんな二人に涙を流し、埋葬をするのだった・・・。

   「見れば年若い少年と、美しい女の人・・・・・・」

   「こんな悲しいお葬式ってのは、めったにないわ。もう悲しくって涙が出てきちゃった」

 ・・・まあ、二人とも死んではいないので、最終的にはどうにか逃げおおせる。

 メーテルが、語るには、「そう・・・・・・、ここの人たちの一番好きなものはお葬式の悲しいムード。悲しいムードを楽しみたいために、人を殺す・・・・・・」。

 マンガ版では、その惑星の住民の特性の原初は語られていなかったのだが、アニメ版では、その星を訪れた異星からの移住者の「弔い方法」に新鮮なショックを受けた住人たちが、それ以来、その異星の葬式のムードに夢中になった等とメーテルが説明していたと思う・・・。

   
         (『銀河鉄道999』5巻・少年画報社)

 ・・・つまり、私の言いたいのは、アカデミー映画賞に『おくりびと』を選んだ会員たちは、メーテルの言った「・・・その星を訪れた異星からの移住者の「弔い方法」に新鮮なショックを受けた住人たちが、それ以来、その異星の葬式のムードに夢中になった・・・」と同じ現象を起こしたということなのである。

 「・・・そのアメリカを訪れた日本からの映画作品で表現される「弔い方法」に新鮮なショックを受けたアメリカ人たちが、それ以来、その日本の葬式のムードに夢中になった・・・」

   ◇

 それから、長くは書かないが、もう一つ、この『おくりびと』がはらんでいる重大な問題を記しておく。

 おそらく、この事については、雑誌『正論』辺りで、佐藤健志のボケが語ると思うが、

 この『おくりびと』には、神性が全くない。

 神を信じようが信じまいが、まあ、勝手だ。

 しかし、人間が神を信じ、宗教をつくり、その一番重要な「死の局面」に宗教の祭祀を導入したのには、訳がある。

 (・・・この意見に怒り出す保守派がいるのだろうが^^;)

 人が神を信じるのは、「死の恐怖から逃れるため」だからである。

 故に、この『おくりびと』においては、とてつもなく、物理的精神的に、死者への敬いを貫徹しているが、

 その儀式において、神仏概念が全く描かれていないのが、とてつもなく「片手落ち」と言わざるを得ない。

 完成度の高い映画であるが故に、その喪失感は、非常に大きい。

 その喪失感・・・、アカデミー賞の会員であるキリスト教国の住人にとっては、なんともいえない魅力に思えただろう。

 八百万の神々を擁する日本人にとっては、それは、冒涜にさえ感じる。

 ・・・「無宗教の慰霊追悼施設」みたいな矛盾を感じる作品なのである。

                         (2009/02/25)


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2009-03-23 12:45:26
こんにちは、感想読ませていただきました。
自分は、十分受賞に値する内容だったと思いますが、
「佳作程度」なのでしょうか、感じ方はそれぞれですね・・・。

ところで、後ろの方に、
>神仏概念が全く描かれていないのが、とてつもなく「片手落ち」と言わざるを得ない。
とありますが、

神仏概念(宗教、宗派)云々が絡んでくる葬儀などの前段階、
「人を送り出す」という文化に焦点をあてた作品なので、
自分はそういう描写は必要無いと思います。

また、等身大の人間を描く作品に神を敬う概念は必要でしょうか。
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Unknownさんへ^^ (ミッドナイト・蘭)
2009-03-24 05:19:03
こんにちわ^^

う~ん、今、このエントリーと、感想のエントリーを読み返しましたが、我ながら見事な内容だと思っていまして、Unknownさんの言うことも尤もですが、私の言うことも尤もだと思うのです。

今一度、読んでください。

結構、慎重に書いていますんで。

これから批判や苦言をもよろしくお願いします!
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