『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
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[映画『ロッキー・ザ・ファイナル』を観た]

2007-04-15 21:25:00 | 物語の感想
▼私の「1991年1月4日の日記」。

《さあ、三が日はビデオ三昧だったが、今日からはキーティング船長の言うとおり、「今を生き」て行こう。
 祖母とマコちゃんを送りに、母と八王子に行く。
 家に帰ると、父がテレビで『日本一のゴマスリ男』を観ていた。
 何が起きてもめげない前向きな植木等に感心する。
 床屋に行き、さっぱりした後、新宿に向かう。
 待望の『ロッキー5』だ。
 ジョイシネマ2館内は空いていたが、内容には満足した。
 今回のロッキーには悲壮感が漂っていた。
 しかし、ロッキーが僕らのヒーローであることには変わらない。
 ストリート・ファイトで終わったのは、ヤケクソで良かった! 》

そして、17年が経ち、ロッキー・バルボアはリングに戻る。

「ロッキー」最終作の六作目『ロッキー・ザ・ファイナル』だ。

私は、正直、ロッキーの熱狂的なファンではない。

三作目などは観ていない。

しかし、今回は気になって気になってしょうがなかった。

なんか、私に必要なパワーを与えてくれそうな気がした。

▼公開は20日からだが、先行ロードショーで、府中の映画館では上映していると聞き、五日市線、青梅線、南武線、京王線と乗り継いで観に行った。

かなり興奮した。

映画を二日と空けずに観に行っていた、上記の日記の頃の私は、若く、感受性も敏感で、多くの映画で「武者震い」みたいな間隔を味わったものだが、ここ数年はなかった。

しかし、今回、クライマックスの試合前には、足がビクンビクンした。

カッケの測定の時みたいに、足が突っ張っちゃって、前の席を数度蹴飛ばし、迷惑掛けてしまった。

でも、前の席の人も、私の気持が分かってくれていたかも知れない。

▼やはり、クライマックスの試合が肝なのである。

そこでロッキーは、戦うことで、全ての問題を解決してくれる。

そこにカタルシスがある。

が、前半の状況を丹念に、現実感を持って描いていかなくては、4コマ漫画の如き『ロッキー4』に堕してしまうのだ(これもこれで面白かったが^^)。

今回は、物語の前半で提示される、多くの人々の問題(悩み)の描き方が、実に見事だった。

スタローンは、いい脚本を書いた。

この17年間の、スタローンの映画俳優としての紆余曲折の経験が生きていると思った。

妙に土臭い情動も描かれているのだが、映像はとてもスタイリッシュであった。

▼ロッキーはリアルに老境を迎えていた。

落ちぶれ過ぎておらず、かつてのヒーローの現実感のある姿を見せていた。

最愛の奥さん・エイドリアンは亡くなっており、その命日には、思い出のフィラデルフィアの街を巡る。

奥さんの兄貴・ポーリーは、長年働いていた精肉倉庫を解雇される。

息子は、「ヒーローの息子」を脱しきれない自分に悩む。

成人したかつての不良娘は、自分の人生に自信を失いつつある。

その息子は、なんかテンポのずれているロッキーに、微妙な軽蔑を向ける。

また、フィラデルフィアに住む人々も丹念に描いている。

私は、これは、ロッキーの「愛郷心」の物語なのだと思った。

『ロッキー4』では、アメリカを背負うまでになってしまったロッキーが、フィラデルフィアと言う街に回帰する物語だ。

活気ある市場が描かれ、酒場が描かれ、寂れた、かつての奥さんとの思い出のデートコースが描かれる。

肉屋の特訓もあるし、州の美術館前(?)のランニングコースも疾駆する。

フィラデルフィアの人々は、ロッキーを「かつての英雄」として温かく見守っていた。

しかし、ロッキーの心には、充たされない思いが募っていた。

多くの人の人生があり、ロッキーは、それぞれに、自分の不器用な語りで素直な気持ちをぶつけていく。

・・・ロッキーは、「戦って勝つ力」を見せなくてはならなかった。

▼才能はあり、連戦連勝なのだが、人気のないヘビー級チャンピオン・ディクソンがいた。

彼は好敵手に恵まれず、その不遇に気付かず、ひねくれていた。

そんな折、かつてのチャンピオンとして、今だに愛され続けているロッキーが、ライセンス再取得をしたことを知り、ディクソンのマネージャーとプロモーターがマッチメイクに動く。

・・・そして、死闘が行なわれるのだ。

試合後、

その強さを見出した者でありつつも、自分の下から離れていったディクソンのもとに、再び招聘された老トレーナーは、言うのだ。

「(ロッキーと戦い)本当のボクシングが出来たな!^^」

試合後、

ロッキーは、心配深げに自分のもとに集った仲間たちに言うのだ。

「さあ、帰ろう!」

そして、ロッキーは、自分の故郷フィラデルフィアの街に戻るのだ・・・。

                      (2007/04/15)