こんなCDを買った!聴いた!

最近購入した、または聴いたCDについて語ります。クラシック中心です。

ヴァントの『皇帝』

2012年03月17日 22時50分26秒 | ベートーヴェン
ほぼ一週間更新ができませんでした。かねてから申しておりましたように、年度末の大イヴェントにとっぷり浸かっておりまして、こんな状況になりました。この間、東日本大震災から一年ということで、いろんな特番を見ました。なかでも一番印象に残ったのが、「3・11のマーラー」でありました。大地震の日の夜、東京で行われたダニエル・ハーディング指揮の新日本POの演奏会の記録です。当日、東京から離れたところにいましたので、当日の混乱は報道でしか、知る由はなかったのですが、いろんな意味で、音楽とは、ということを考えさせられた番組でした。さすがNHKですね。

さて久々の更新です。今回はベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73『皇帝』であります。古今東西のピアノ協奏曲の中でも不朽の名曲でもあります。しかし、私はあまり好きではありませんでしたので、それほど多くの演奏のCDを持っているわけではありません。今回の演奏は、エミール・ギレリスのピアノとギュンター・ヴァント指揮ケルン放響。1974年12月13日のライブ録音です。このCDは、たまたま元町の中古やさんで発見しました。

ヴァントについては、逝去後MPOやベルリン・ドイツ響やこのケルン放響とのライブ盤がそれなりの枚数発売されていました。元々ライブ録音が多かったので、ライブだからどうのこうのということではないでしょう。この演奏は1974年。ヴァントが大ブレークする1990年代半ばから約20年も前の演奏ですね。私は、何度か言及したことと思いますが、1980年代からヴァントの演奏をかなり贔屓にしておりました。そんなこともあって、ヴァントのCDはかなり購入しております。このCDも、そんなこんなで買わなければいけませんということで、購入した次第です。私は、これも以前に申しましたが、ヴァントは1990年代になって神懸かり的な変貌を遂げて、真の巨匠となった、といた類の発言を耳にします。しかし、私は以前の演奏と最晩年の演奏、そんなに違いがあるのかなあ、といつも思っています。そんなことで、この1974年のライブも、ヴァントらしさを存分に感じさせる演奏であると、思っております。

それで、この演奏なんですが、まずギレリスのピアノ。ギレリス独特の硬質のタッチで実に鮮明なピアノを聴かせてくれます。ピアノの粒の揃った美しさが絶品であります。ひとつひとつの音がはっきり明晰です。そして弱音の美しさはほんとにいいです。こんなピアノと非常によくあっているのうがヴァントの指揮です。この演奏、さすがヴァントであります。無駄な音が一切せず、オケの音は非常に締まっている。無駄なテンポの変化もまったくなく、過剰な表現や誇張した表情もまるでなく、実に揺るぎないがちがちの演奏。これがまたたいそう心地良いのです。こんな演奏は嫌いな人は嫌いでしょうが、私は大好きなのであります。こんなヴァントの指揮にギレリスのピアノはよく合っています。第1楽章、この曲の特質であるスケールの大きな皇帝の名にふさわしい演奏に比べると、少々物足りなさはありますが、それを補う力強さ。しかし、オケはほんとに純な響きですね。そしてどの楽器も生き生きとした演奏であります。ここぞというところのピアノの強打もいいです。第2楽章、これが一番印象深い。オケの弱音での旋律が非常に美しい。それに加わるピアノの弱音がそれ以上に綺麗。ギレリスのタッチの美しさには心が震えますね。両者の消え入るような演奏が極上の美を際立たせています。ヴァントはここでも過剰な表現はなく、それでもこの演奏の前では呆然としてしまいます。第3楽章、一転して力の籠もった曲になりますが、ピアノもオケも一歩もひけを取らない。一層の充実振りが耳を奪います。派手さはないですが、ピュアな音楽はいいですねえ。

ヴァントの演奏、最晩年の音楽の変化をあまり意識しないのは、自分の気に入っているところが以前から変わっていないところだったためでしょうね。だから気がつかないのでしょうか。今も昔も素晴らしいヴァントでした。
(Profil PHo4052 2005年 輸入盤)

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2 コメント

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コメントありがとうございます。 (mikotomochi58)
2012-03-19 23:08:05
バルビ 様、コメント感謝です。ヴァントのベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、どれも絶品です。こんな指揮者、なかなか出て来そうにないですね。ご指摘の通り、締まった、そして実に厳しい演奏で、私にとっては理想のドイツ音楽であります。また、ご教示ください。
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Unknown (バルビ)
2012-03-18 22:53:31
こんばんは。
ヴァントのベートーヴェンでは、シンフォニーの全集を購入し、時々聴いています。彼の指揮するベートーヴェン、私は好きです。引き締まっていて、厳しくていいですね。ヴァントの指揮なら、皇帝も聴いてみたいですね。

私も以前は、ヴァントという指揮者にはあまり関心がありませんでした。LPもケルン放送響とのブルックナー6番しか持っていませんでした。

そしてブレイクしてからの彼の色々な録音を聴いてい見ると、ブルックナーにしてもブラームスにしてもベートーヴェンにしても、どれも素晴らしい。マイブームの1人です。
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