大島渚監督の訃報を知った。
奇しくも昨日、定期購読している”清流”の本で、奥さまの女優小山明子さんの記事を拝読したばかりだったので驚いた。
最後まで看とられお家に連れて帰られたと言う、そんな折今日から舞台に立たれると言う奥さま。
清流には”小山明子のしあわせ日和”と題して、小山さん書の水彩イラストを織り込んで連載で記事を載せておられる。
いつの頃からだったろうか、10年以上も購読しているので、過去のを残している訳ではないが、
覚えているだけでも7年はようにたっている。
監督の度重なる病気、介護、その中でご自分がうつ状態になり入退院を繰り返すと言う、壮絶な人生。
「自分自身が毎日の生活を楽しまなければ、いい介護はできない」と言われた小山さん、無理をしてでも自分の為の時間を
作るようにしていると何年も前の記事には書かれていた。
束の間の息抜きにと、それでも年に数回の事と言いながらお月見に出かけられたり、女友達と歌舞伎に行かれたり、銀ブラで
お買いものを楽しまれるなど、絵もそうであろうか。
初めのうち、女優さんだし金銭的にも出来うること・・とそう思ったりしていたが、それは懸命な介護をされていたからこそであり、
介護でうつ状態になってご自分が入退院を繰り返すようになられても、監督の介護をやり遂げる為に考えられた末の、
知恵であり大切な心なんだと納得する事が出来た。
同じような楽しみ方は出来ないにしても、身の丈に合った今の生活の中での楽しみ方、自分の処し方を考える・・
それは人それぞれで、小さな些細なことでも、自分が喜べるようなことを持つ楽しみな時間は、とても大切な事だと思った。
実際介護と言っても、様々な状況、家庭環境があるので、同じようにはいかないのではあるが。
2009年の小山さんの記事のコピーから・・
「介護の夫をほっとらかしにして自分だけ楽しむなんて」と、眉をひそめる人もいるかも知れませんが、介護は毎日、毎日同じ事の繰り返し、
それがいやだとは決して思いませんが、時にはそこから離れて非日常の時間を過ごしてリフレッシュすれば、その分また心のこもった
介護も出来ます。 自分がいろいろ見たり感動したことを話すと、不自由な身の主人にも外の世界を感じさせてあげられますし、
その報告を聞くと彼の顔もイキイキ、ニコニコしてきます。 家の中に閉じこもって、二人だけの世界に浸ってしまうのはお互い苦しいだけ。
だから私は、自分が楽しむ事に罪悪感をもつ必要はないと思っています。
とはいえ、こうした楽しい時間が持てるのも、誘ってくれる人や一緒に出かけてくれる人があってこそ。
充実した老いを迎えるには、人間関係の貯蓄が大切と言う話も聞きますが、まさしくその通りだと実感している今日この頃です」
亡くなられた時「明日が分からないから、今日を精一杯と尽くして来たので悔いはありません」と、言葉を正確には記憶してないが
きっぱりと言いきられた姿に感動を覚えた。
介護と聞くと、田舎で義母を看てくれている兄夫婦を思う、いつも思う。
365日の介護の日々、義兄には外に出てラージボールをしたり麻雀など楽しむすべはあるけれど、姉に楽しみはあるのだろうかと思う。
「花を育てたり、畑で野菜を育て収穫する、畑にへ行っているときが一番のストレスの解消よ」と言う。
そこに娘さん3人にパートナーが出来、6人みんなが揃う事や、近くに住む娘さんのお婿さんが1人でも寄ってくれることもあると
新たな楽しみなことを話してくれた。
週2回のデーサービス、月一度のショートステイ、あずかってもらっているその時間が、唯一ほっとされる兄嫁さんの時間。
兄のことは分からずとも、身近で毎日お世話される兄嫁さんだけは・・どうか最後まで覚えていて欲しいと、
朝義父の遺影に手を合わせるとき、心の中で願う。
小山さんの細やかな心遣いの献身的な介護、そんな中での楽しみ方、出会う人を大切にされながらご自分の人生をも
豊かなものにと、日々の気配り心配り・・・
本をやめずに長きにわたり購読している不思議は、もしかしたら私の将来の為にと誘ってくれているのか。
時々夫と老いた2人の行く先を話すときがある。
私が先にくたばると以前から夫は言っているが、お互いに腰や膝を労わる現実、どちらになっても小山さんの心の持ち方、
この事がらを活かす事はとても大事だと思った今日である。
大島監督のご冥福を心からお祈り致します。