「今日は潮が悪いでな・・」出掛けに、実家が淡路で漁師をしておられる友人が言った。
夫は彼のことを船長と呼ぶ。
半分時間つぶしの釣り。 釣りと聞いたとき(行ってみようかな・・)と思った。
仕事を辞めたのだから、月曜疲れてても平気だし日焼けしても平気だし。
寝たのが一時過ぎだった。 二時四十分に目覚ましをかけ起きた。
夫は普段会社へ行く時は起こすのに、三時きちんと起きてくる、なんでやのん。
三十軒掘りに止めた船は真っ暗闇の中を四時出発した。
二十四時間TVの影響かあちこちのマンションにぽつんぽつんと灯りが見える。
船室へは入らず船尾でスピードに身をまかせながら風を楽しんでいた。
時速三十キロ位だそうである。 そのスピード感が心地よい。
時々船室から夫が顔を覗かせる、ふふん私を気にしてるのかな。
和歌山って言っていたけれど、船長が用事で早く帰らないといけないので近場、明石にしたそうだ。
着いたのが五時半過ぎ、まだ朝日は出ていなかった。
竿釣りでなくトローリングみたいな(名前忘れた・・知らんのに偉そうに書くなよと夫が釘を・・)
だから私は今回は本当は用がない。 いいのだそれでも。
時間が経つにつれ、船の数が増してくる。
仕掛けをして十分「おりゃ、掛かった!」手ごたえを覚え夫が引き上げると30cmほどの太ったはまち。
「タイガース先制点や!」と私。 「しょうもないこと言うな」と言う顔をされた。
次第に東の空が赤みを帯びて来た。 しかし今日は雲が厚いからあの溶けそうな赤い色の朝日は瞬間。
しかし一時まるで絵のような場面に遭遇した。 (きれいや・・)自分でそう思った。
友人は小さい時から親を見て育ち、大阪に出て来るまでは一緒にやっていたりするから、
その道に詳しいから結構細かい事に厳しい。 夫は準備も上げ膳据え膳の方だからこの時は一回り以上も
年上なのに生徒である。 船長の前では少し緊張した生徒、いつまで経っても。
「おい!重いで!かなり重い!来てくれ!」船長が舵を気にしながら「はよひいて、ひいて!」
「重たいで上がらん!」「何してんねん! はよひかんかい!」その場が慌ただしくなる。
あげくの果て逃げられた。 「もう~残念やな!」少し笑いながら舌打ちする船長。
前にもそういう現場見ているので私は小さくなっていた。
「奥さんがおるから僕も・・」(分っています、本当ならもっと主人を怒鳴っていると・・)
それからは、何度か仕掛けたが掛からない。 「場所変えるか、帰りがてら」
一向に掛からなかった。 まぁこんな日もある。 全く釣れない日だって。
友人に船頭倶楽部の人達から釣りの具合を聞く無線が入る。 みんな鯵が少しとか今一のようである。
そんなやりとり聞きながら、楽しげでいいよな・・男の人七人の敵、外での苦労って細々と、
家庭に持ち帰らないもの。 こうやって消化してるんだろうな。
釣りのTV番組もお付き合いで良く夫と観るけれど、魚を釣った時のあの笑顔!家庭ではどうやっても
出ないだろうなぁと思うくらいの笑顔。 いつも感じる、まるで童心に返ったみたいな笑顔。
「逃がした魚は大きい・・」船長が言う。 夫は決まり悪そうに「あれは重い、ひけんで」と言う。
小さいはまちだけれど、船長と半分っこ。 お刺身にして食べたけれど油がのっていてすごく美味しかった。
私は、満足だった。
暗闇の中を走る船から見る景色。 まだ街は寝ている、ネオンや高速度道路の明かりが続く景色。
そして何よりも感動は、明石海峡大橋の下をくぐり写真に収めることが出来たこと。
(前に行った時は、そんな趣味はなかったし、もちろんブログだって)
朝日のあたる街並み、海の・・風・・ なんと幸せ・・そう感じたもの。
釣れなくて気の毒だったけど(私は・・別に・・それでも・・)
夫のブログに前日妹、kanaへ「トドを連れて釣りに。 四、五年ぶりかな」
大漁を描いて書いていたコメントを読んだとき、(ちゃんと覚えてるんや・・)
なんだか嬉しかった。 私だって行ったらきっと嬉しいに違いないと思って行くって言ったし。
写真撮りたい私の気持ち分かっている、夫も充分。 お互いがお互いの心思いながら・・。
それだけで充分。 それに・・鯖や鯵や太刀魚や夫が言うように大漁だったら?
バッテラを作らないといけないし、小さな太刀魚なら三枚におろして味りん干しを作らないといけないし。
大変ラッキーな釣り曜日・・だった。