駅の地下道を出たら、マンションの両脇には思いっきりエニシダの花が枝垂れていた。
なつめのクラスが、インフルエンザで学級閉鎖になった。
今日は神戸の婦人のお見舞いに行くと決めていたので、次女には仕事休んでもらった。
前に来たとき街路樹には少ないながら、桜が満開だった。
一気に街は緑色に変身。 桜もいいが、この緑に変わった街色も爽やかで好きだ。
近いうちに伺います・・と絵葉書を送っていたが、今日とは言ってなかった。
お見舞いに来る人もいない夫人が気になりつつも(皆それなりに高齢や疎遠だったりで)やっと来れた。
びっくりしておられたが、今日はお風呂にも入れてもらいさぱりしていた。
冷たいデザートを食べさせてあげた。 備え付けの冷蔵庫も、TV同様カードを入れないと冷えないので持ってきても駄目のようだ。
自分で歩けないし、看護士さんにも頼めないし看護士さんもそこまで手が回らないのだろう。
TVの操作も教えてあげてもまた分からなくて、つけていなかった。 同室の方とも話しできるほど体調が良いわけでもないし。
「なんでこんなことになったんやろう。 こんなんで生きててもなぁ・・」
正直病気を治すには違いないが、夫人に今生きる目的が薄れているのを感じる。 今何の楽しみがあるだろうか。
顔を見に・・が目的ではあるが、前回は時間がなくて夫人の部屋にも行ってあげることができなかったから、今日は早い目に来たのだ。
「ご家族の方ですか?」「いえ」 「お身内?」 「ではありませんが、そのようなものです」と言うと、介護品を頼まれたので買い物に。
家へも行った。 入院したままの台所には食べたままのお茶碗類が流しに、ガスコンロににかかったお鍋には煮物が腐っていた。
ジャーにもご飯が。 寝室を片付け、お風呂の水を抜いて、冷蔵庫の傷んだものや腐るであろうものを処分した。
唯一、60を過ぎている甥っ子さんがいるが年に一度も顔を合わせていなかったので、仕事のない土、日かに来ては、顔を見て帰っているらしい。
身内なのでこの方が支払とかされる。 しかし、留守宅の鍵を渡しているが、冷蔵庫の云々そこまでは多分気づかないと思う。
お身内にお方が来られるようになったので遠慮がちにではあるが、自分なりに洗濯物や気づいたことはさせてもらっている。
「あんたとけんちゃんには子供みたいにしてもらってなぁ」
「ご縁ですから、これも・・」
長女と夫が6時前迎えに来てくれることになっている。
3回乗り換えの電車、夫人の家へ行ったり介護用品の買い物にも歩きなので、帰りまで足がもたないから。
病室の方に聞こえるので筆談で、
「お寿司食べたくないですか? 買ってきますよ」とマジックで書いて見せた。
「巻きずしが食べたい」 買い物ついでに、買ってきたら喜んで食べてくれた。
おやつにと音がしないように濡れおかきをいつも買ってきている。 この間好きなチョコを食べて少しベットにこぼれてたのを
看護士さんに見つかった・・「糖尿がでているのに」と言われたらしいが、もう88歳にもなって・・おかゆと粗食・・
こんなに楽しみのない入院生活は可愛そうと思う。 少しくらいは・・娘ならそうする。
夫人の住宅に行ったとき、この季節に咲くポピーやいろんな花が植え込みに咲き乱れていた。
この花を眺めて楽しんでもいたのに・・花の艶やかさが空しくもある花たち。
夫と一緒に次女もなつめとお見舞いに顔を出した。
2、30分だったが、笑顔になった。
少しづつコルセットをつけて、歩行装置の中に入って歩く練習を始めたようだ。 あ・・歩くようになったら良かったとほっとした。
脊椎の痛みや寝腰も痛い夫人ではあるが、思ったよりやせてもいなくて良かったね・・と帰り道。
こうして迎えに来てくれる家族がいる自分が、とてつもなく幸せに思えた。