吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

篠田真由美『睡蓮のまどろむ館(イヴルズ・ゲート)』角川ホラー文庫/平成28年5月25日初版発行

2018-01-27 20:07:13 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 予備知識なしでイキナリ読み始め、途中で間違いに気づきました。これってホラーだったのだ!



 拙ブログを何と篠田真由美先生(本人)にご訪問戴いたのでサッソク購入したこの本、よく見れば表紙にハッキリ『角川ホラー文庫』って書いてあるじゃない。
 すいません、途中まで密室殺人ミステリと思い込んで読んでました。で、登場人物のアリバイに注意しつつ読んでたワケです(アハハ~!失礼しました!いや、スッゴク失礼だと思います。ごめんなさい)。
 何といっても設定が、八角形をした通称『埃及(エジプト)屋敷』にまつわる首なし死体殺人事件とくれば、私なんかは当然のように『エジプト十字架の謎(エラリー・クイーン)』や『三角館の恐怖(江戸川乱歩)』がパッと脳裏に浮かんでしまうのですよ(話が脱線するけれども、どうしてエラリー・クイーンの作品はあまり映像化されないのだろう?アガサ・クリスティーやコナン・ドイルの作品をもとにした映画やドラマはイッパイあるのに?)。

 で、この話は異界から侵入しようとする異形の者たちからこの世界を守る話だったのですね。
 あー、途中で気が付いた時は赤面モノでした。これは一種のクトゥルー神話体系(的な小説)なのです。
 特定の場所に異界への門『イヴルズ・ゲート』が開き、邪悪なモノたちがこの世界への侵入を試みる・・・イヴルズ・ゲートを描写してみるならば、ハガレンで『あっち側へ持って行かれる』と言っていた門や、吉良吉影が引き込まれた『振り返ってはいけない路地』のような感じでしょうか?異界からの侵入者たちは、この世界の住人を利用して『イヴルズ・ゲート』が開くよう仕向けます。

 これに対抗するのが『腐れ縁コンビ』。トリノのエジプト美術館に努める考古学者で端正な面持ちのルカ・ローゼンスタインと、比較宗教学専門のワイルドな御子柴夜刀。通常関わりの薄そうなこの二人が腐れ縁になるには、もっと濃密な関係性が必要かな~と思います。出会いについてはたぶん別の話で語られる予定で、第一作で既にお互いを腐れ縁だと自覚しているようです。

 招待された埃及(エジプト)屋敷では、霊媒の素質を持っていた少女(が成長した女性)たちも招かれ、どうやら怪奇現象を解き明かす実験?が試みられる様子。この辺は『ヘルハウス』的展開です。

※ご参考『ヘルハウス』予告編(←リチャード・マシスン原作「地獄の家」を映画化)


 埃及(エジプト)屋敷とは研究者であった持ち主がエジプトから発掘した壁画を非合法に持ち出して日本国内で岩窟神殿を再現した建物なのだそうです。この建物内で起こる怪奇現象の数々(前の持ち主は密室内で首なし死体となって発見されたらしい)。果たして腐れ縁コンビは異界からの侵入をくい止めることができるのかっ?

 こんな感じです。うーん、ホラーって難しい。筋を通る説明をしてはいけないし、いかに怪異な現象を起こしてさらに現実味を持たせるか・・・って困難に挑戦し、緻密な描写で成功しています。多少気になる点も無いではナイですが、楽しめます。

註)気になる点

①天災と原発事故により本州が人の住めない地域になっている設定は必要なのでしょうか?パラレル・ワールドの話にしなくても物語は成立すると思えるンですが・・・。
②狂言廻し二人の関係性が希薄すぎるのに、しょっちゅう会ってる設定はムリっぽいかと?
③腐汁が館の中に散らばるシーンはちょっと唐突かな~?と。怪異現象は現実の物となる証拠を残さない方が怖くないですか?


最新の画像もっと見る

コメントを投稿