吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

ホルヘ・ルイス・ボルヘス『幻獣辞典』(晶文社/1974年12月25日初版)

2017-10-16 08:38:36 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 古い本ですが私の蔵書から一冊紹介します。

 神話や文学作品等に登場する怪物や妖精たちについて網羅し解説した稀有の本。
 美術作品の絵解きに重宝するスグレモノ


 ※幻獣辞典:表紙はチェシャ猫とキルケニー猫

 ア・バオア・クー(Aの項)から始まってザラタン(Zの項)で終わる。

 例えば【セイレーン(Sの項)】に関する解説はこんな感じです。

(前略)『オデュセイアー』の語るところでは、セイレーンたちは船乗りを誘惑して船を難破させるのだが、オデュセウスはその歌声を聞いてなお生きていられるように、漕ぎ手たちの耳に蝋を詰め、自分のからだをマストに縛りつけさせた。セイレーンたちは彼を誘惑し、この世の一切の知識を約束する。(中略)神話学者アポロドロスが『ビブリオテーケー』に記している伝説によると、アルゴー船に乗っていたオルペウスはセイレーンたちよりも甘美な歌声を聞かせ、このために彼女たちは海に身を投じて岩に変えられた。魔力の利かなくなったときには死ぬ運命にあったのだ。スフィンクスもまた、謎が解かれたとき断崖から身を投げた。(後略)


 ※ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー『オデュッセウスとセイレーン』(「怖い絵」展より)

 解説は実に的確。香気あふれる文章で読み物としても楽しめます。原典や参考文献の記載もあって、この本を中心に読み進めていくと、幻想文学や関連する美術作品について幅拾い知識を効率的に手にすることができる、私の大切な本のひとつです。
 ぜひとも一家に一冊常備すべき本です(ホンマかいな?)。

 


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おおっ‼️ 常備しますっ。 (きなこママ)
2017-10-16 10:03:44
なんと 素晴らしいゾクゾクする様な書籍でしょう。
私は この記事を読んで身震いしました。
(漏れ等はありませんでした。)
古い本ですが 何処かで探し出して 我が家の蔵書に加えたい
ものです。
それよりも 読んでみたいという気が モリモリ湧いて来ました。
いつ何処で この様な本を ゲットされたのですか?
もしかして 最愛の書では?
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今は新版になってます! (管理人)
2017-10-16 13:01:49
新版になって、現在もちゃんと売られてるみたいです。文庫もありますが、本家本元の晶文社版はあの『スズキコージ』が挿絵を描いてるそうですよ!書店で発注できるようです。

私の蔵書は(最終ページを見ると)1984年8月20日17刷ですから、25~26歳の頃に梅田(大阪)の紀伊国屋書店で購入したと推測されます。それ以来ずっと愛用。

最愛の書は・・・愛蔵版のサロメ公主(ワイルド作,アラステア挿絵,日夏耿之介訳『サロメ』サバト館発行)ですが、この本も手放せない本のひとつです。
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読みた〜い‼️ (きなこママ)
2017-10-16 13:38:39
むくむくと興味が湧いて
読みたい気が充満し
とうとう Amazonで検索したら
mobile さんの蔵書と同じ晶文社の古書がありましたので
発注しました。
私は知らなかったのですが
この本の作者はとても有名な詩人だそうですね。
こんな本に巡り合わなかったという事は
初版の頃は 私は一体何してたんだろう?と
人生を省みてしまいましたよ。
いつも 楽しい目から鱗の情報をありがとうございます😊
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恐れ入谷の印度人です。 (管理人)
2017-10-16 14:12:17
なんと凄い行動力!
電撃作戦(ブリッツクリーク)もぶっ飛ぶ速さです!おみそれいたしやした!

私の愛読書を気に入って貰えてウレシイ限りです。
こんなのは初めての経験です。
ありがとうございました。m(__)m
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 (みゃー大工@ヤンキー)
2017-10-16 16:43:08
おお、今調べたらAmazonで売っていました。
ロングセラーなんですねー。

ローレライ伝説と言い、男をたぶらかして舟を沈没させるのはおなご。
(綺麗な女性の顔して、
顔以外が鳥だったり、尻尾だったり忙しい。)
たぶーん、運転下手の男の言い訳でありましょう。
台風にも女性名が大すぎー。
女性って、恐ろしがられすぎだわw

私は西洋建築に、ガーゴイルが雨どいに使われているのが可愛くて好きです。

映画を見ても、古典的な絵を見ても、
この一冊で、もう大丈夫ですね。
一家に一冊って、「家庭の医学」のキャッチコピーのようw

管理人さんが、あれれ、上だ。
私よりは10は下と思っていましたー。
で、で、、、
柳柊二という挿絵画家をご存知ですか?
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E6%9F%8A%E4%BA%8C
私は、姉のギリシャ神話の子供板、岩波かな?を、
この方の挿絵でみて凄い画力だなぁと感心したのです。
ここからギリシャ神話への興味が出たという感じです。
検索しても、
この方の挿絵のギリシャ神話が残っていなくて悲しいです。

聖書は旧も新も、
父が日本語不自由な宣教師と仲が良かったんで、
それにちなんだ本を、クリスマスにバンバンくれる、
それが、みごとな装丁で、形から入っていきやすい。
子供の頃はお付き合いで聖書に親しみました。クリスチャンでないけど。

名画のテーマがわかると、より嬉しいものです。
久し振りに美術が好きだった、学生の頃の気持ちに戻りました。
ありがとうございます。
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いやー・・・意識してなかったです。 (管理人)
2017-10-17 09:56:04
>柳柊二という挿絵画家をご存知ですか?
>たぶん、いろんな雑誌で見ていたことと思いますが、その頃は画家まで意識していませんでした(たぶん武部本一郎と区別ついてなかったかと・・・スイマセン)。
挿絵画家について意識するようになったのは高校以降で、生頼範義(おうらいのりよし)と深井国(ふかいくに)が好きでした。
-------☆☆☆-------
生頼範義:スター・ウォーズの公式ポスターを描いた唯一の日本人。『鹿児島のアトリエにヘリでジョージ・ルーカスが来て依頼した』というのは都市伝説です。ヘリが着陸できるような場所はありません。最初に知ったのは、平井和正『ウルフガイ』シリーズの挿絵でした。
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深井国:虫プロのアニメ『哀しみのベラドンナ』で知りました。ハヤカワ文庫(階層宇宙シリーズ)や山村美紗サスペンスの挿絵を描いてます。
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