しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

昭和20年8月8日”福山空襲”⑧空襲被害者への補償 

2021年08月09日 | 昭和20年(終戦まで)
家を焼かれた補償も、負傷も、焼死も、いっさい国からの補償はない。
戦死者には”遺族連盟”という強力な政治団体が存在したが、空襲で焼き出された人は組織化することはなかった。それも一因のような気がする。



広島県戦災史」 広島県 第一法規出版  昭和63年発行 

救護と被災処理

脱出した人々は、かねて町内会単位に指定されていた避難所へ集結した。
しかし一帯もかなり被災しており混乱はさけられなかった。
市周辺の人々は炊き出しを行なったが、医師・薬剤師らも多くは被災しており予定通りには活動できなかった。
県立工業と誠之館中学に設けられた救護所は、やや本格的なものであったが、8月14日に西国民学校に移され9月6日まで治療が行われた。

(判明した人は)死体はむしろに巻いて芦田川の堤防に臨時焼き場で火葬した。最初は市が火葬したが、あとには
市・警察も「芦田川に松丸太を置いてあるので、各自で焼いてくれ」といっている。
しかし、松丸太はすでになく、なかには農家でもらって焼いた人もあったという。

・・・・

全国の各都市が空襲され、大量の人的被害を出しながら、
軍・警察・市の指導者は、市民をあらかじめ退出させる措置をとらなかった。
疎開は重病者・妊婦・老幼者にとどまり、
むしろ「火災を防ぐため疎開してはならない」
「男子は絶対逃げてはならぬ、残って家を守れ」と命令されていた。
戦争指導者が作為した「神州不滅」や「一億玉砕」という非合理的なスローガンが自己呪縛になった。




「逃げるな、火を消せ!」大前治 合同出版  2016年発行 

空襲被害者への援護制度


戦災者への生活援護は昭和20年12月15日閣議決定された。
ところが9ヶ月後の昭和21年9月消滅した。
昭和27年の衆院で、
戦争犠牲はあらゆる階層、あらゆる人々に対してほぼ同一に発生する
軍人・軍属だけでなくすべての戦争犠牲者に同様の援護をおこなうべきだ。
昭和28年軍人恩給が復活した。
一方,空襲被害者への援護制度は復活しないまま70年以上が過ぎた。
諸外国と比較しても、
空襲被害者へ一切補償しない点で日本は際立っている。
ドイツ、イギリス、フランスは軍人か一般市民かを問わず戦争の直接的影響によって損傷した人は援護を受けられる。

戦時中の国策を明確に批判した大阪地裁と大阪高裁
※退去させない方針
※安全性の低い防空壕
※国民に空襲の実態を伝達させない方針
※焼夷弾の脅威を過少に宣伝

ここまで認定されながらも、結論としては
空襲被害者と軍人との格差は著しく不合理のままである。




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昭和20年8月8日”福山空襲”⑦福山には赤痢が蔓延した 

2021年08月09日 | 昭和20年(終戦まで)
昭和20年夏、
三吉町のおじ(父の弟)の家では、家は無事だったが、まだ女学校の生徒だったおじの義妹が赤痢で死んだ。
茂平でも赤痢が流行り、家では祖母と曾祖父の二人が感染した。
用之江の隔離病舎へ入り、母は子をおんぶして世話をしに通ったそうだ。
祖母は治ったが、高齢の曾祖父は死んだ。



「広島県戦災史」  広島県 第一法規出版  昭和63年発行 

忘れることのできないことは、
空襲後に多数の腸チフス・赤痢患者が発生したことである。
すでに腸チフスと赤痢は空襲前に発生し、市立福山病院には空襲時に腸チフス11人、赤痢12人が収容していた。
しかし、空襲によって家を失い水道が止まり、
「夏の暑さに加えて戦災の疲労が重なり、さらに栄養不足が手伝っ」て、チフス・赤痢の大流行となった。
戦災後の死亡者数が特に多いのが注目される。
栄養不足に加え医薬品の極度の不足によるものであった。
「牛に飲ませる下剤すら投薬される」ほどの医薬品の極度の不足があった。

三吉町の避病舎が焼けたので患者は蔵王町の病舎や千田村隔離病舎を借用して収容し、
沖野上町廃川地の元軍用施設バラック仮病舎にも収容した。
11月末になってやっと鎮静化したのである。




「福山市引野町誌」 引野町誌編纂委員会 ぎょうせい 昭和61年発行 

敗戦と物資不足下、筆舌では尽くし難い苦難が被災者をしめつけた。
その中でも最も悲惨を極めたのは引野村を襲った赤痢禍で、被災に追い打ちをかけるように発生した。
患者たちは、医療施設も薬品も整わない隔離病舎で、専ら家族による看護を受けなければならなかったのである。
どの家もどの家も総なめにして患者を出した。




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