日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本の成長戦略の限界

2015年09月05日 09時58分41秒 | 日々雑感
 昨年安倍政権は発足以来成長戦略をいろいろ打ち出した。成長戦略は歴代の内閣も打ち出しているがいずれも景気回復には結びつかず成功していない。景気の本格回復に求められるものは、「買いたいもの」を作り出す成長戦略であるが、それが具体的に何か分からないため、四苦八苦している。次善の策として、買いたいものを作り出すであろう環境を整備するのに資金を投じているのだ。
 例えば、法人税の引き下げは平成27年度税制改正で、法人税率を現行の25.5%から23.9%に引き下げられることになった。海外資金の日本への投資を促進する筈であったが、効果があったとの声は聞こえてこない。これは、円安の影響があるかも知れないが、何に投資すべきか、すなわち何が売れるか分からないためであろう。
 また、農業改革においては、農業の法人経営体数を2013年の1.4万から10年後に5万の目標を掲げた。自由な発想により農業の活性化を狙った策であろうが、この1年間で約1千法人の微増で、遅々として進んでいない。これも法人経営により、売れるものの具体的なイメージが浮かばないことが背景にあるのだろう。
 日本では、新しい産業がなかなか登場しないが、米国ではそうでもないらしい。朝日新聞によれば、創業から10年もたたずに企業価値が10億ドル(約1240億円)を超える巨大な非上場ベンチャー企業が、米国シリコンバレーで続々と生まれているそうだ。
 例えば、配車アプリ大手「ウーバーテクノロジーズ」の企業価値は400億ドル(約5兆円)を超え、ソニー(約4兆1千億円)をも上回ったとのことだ。この企業は2009年の創業で、自家用車のドライバーが空き時間を利用してタクシーのように客を運ぶサービスを仲介する事業を世界各国で展開するのだそうだ。日本では、このような活動は白タクとして違法な活動になるのであろうが、日本の規制の厳しさ、米国における発想の自由さを感ずる。
 また、自宅の空き部屋を貸す人と旅行者をネットで仲介するサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、サービス開始から7年足らずで企業価値が200億ドルに達したと報告している。旅行と言えば旅館やホテルに宿泊するものとの常識を覆す「一般住宅のホテル化」の新しい発想である。
 この他、ITに関する各種のサービスが名乗りを上げているそうだ。世界中からやる気のある人が集まり、自由な発想とそれに投資する環境整備は、日本の成長戦略でもおいそれと出来そうにもない。中国はGDPでは日本を追い越し、米国に迫っているが、その中身はコピー技術だそうだ。中国の経済失墜の原因の一因もこの辺りにある。日本で出来ることは、せめてこのような時の流れに乗り遅れないように、その周辺を固めることか。
 来年度の概算要求が8月31日に出されたが、案の定小型無人機ドローンの普及支援に17億円や人工知能などの研究強化に100億円が盛り込まれている。また、日本が得意とするロボット分野では、介護ロボット開発の加速度支援に5億円や燃料電池自動車の普及のための水素ステーション整備費補助に62億円が盛り込まれた。この分野での日本発のオリジナルを期待したいが、経済再浮揚に対する効果はあったとしても数年先であろう。(犬賀 大好-161)