日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

アベノミクスの行き詰まり

2015年09月19日 09時28分26秒 | 日々雑感
 デフレ脱却に向け異次元緩和が始まったのは2013年4月であるが、それからほぼ2.5年経つが、2%のインフレ目標は達成できていない。日銀黒田総裁は、消費税の8%実施に伴う消費の落ち込みや原油安は想定外であったとかの言い訳をしているが、総裁たるものそれ位の情勢変化を見込んでいなかったとは情けない。逆に、経済とはそれくらい不確実なものなのかと思ってしまうが、ならば、異次元緩和宣言の際の自信満々な態度は人を騙すための方便であったと思わざるを得ない。また、過度のインフレは制御可能との言も、怪しくなってくる。
 エコノミストの多くはデフレ下では、「もっと安くなってから買う」との意識が強く消費が伸びないとか、「失われた20年」だとか主張し、デフレを悪の権化にしていた。この20年の間には、テレビ放送のデジタル化が行われ、日本の家庭の大多数がアナログテレビからデジタルテレビに買い換えざるを得ない一大イベントがあった。多くの国民が金を使ったが、それでも日本経済が回復したと見なすエコノミストは見当たらない。一体、どのようなことになれば、日本経済は回復したといえるのであろうか。
 異次元緩和により政府の薦める成長産業政策と相まって企業は新たな産業への投資をする目論見であった。また、円安のお蔭で多くの企業が最高益を更新し、投資は益々増加するはずであった。確かに、物流業界での設備投資は増えているとの報道はあるが、日本が得意とする製造業における投資は芳しくないようである。関係者はこれだけ金融緩和したのに、新たな産業への投資は増えないのをどう説明するのであろうか。
 そもそも、成熟したこの世の中買いたいと思うものが無くなったのが根本原因だ。もっと安くなってから買うのではなく、欲しいものは大体手に入ってしまっているのだ。新たに欲しいものを作り出す政策が無いのだ。異次元緩和で世の中に出回った金は株式にまわっただけなのだ。その株式も中国経済の破綻の影響で低迷しだした。
 第三の矢である成長戦略でも、目を引くのは観光産業程度である。それも日本の観光設備が整ったからではなく、中国を始めとする東南アジア諸国のお陰だ。地域振興券も一過性であろう。農業においても、規制緩和による活性化を目指し全農の権限を縮小する施策を推し進めているが、まだ中途半端である。タクシー業の自由化にしても、最近ではタクシー減車と逆に規制を強化する方向である。米国ではインターネットを介し自家用車をタクシーとして利用する新たなサービスが開始されているようである。規制緩和も白タクを合法と認める位の大胆なことをしなければ、新しい産業は生まれない。社会主義的な色彩が強い日本において、大胆な規制緩和は出来そうにない。
 政府は2020年度までに、国と地方の基礎的財政収支を黒字化しようと目論んでいるが、その前提はGDPの実質2%と能天気な高成長を前提としている。異次元緩和の行き詰まり、成長戦略の行き詰まりとアベノミックスは行き詰っている。安保関連法案が一段落した後、安倍首相の関心事は何になるのであろうか。(犬賀 大好-165)