今年7月3日、新しいエネルギー基本計画が閣議決定された。今回のエネルギー基本計画では、東電福島第一原発事故の経験、反省と教訓を踏まえ、2030年、2050年に向けた方針を検討するとしており、日本の将来のエネルギーを方向付けると大いに期待していた。
しかし、中身は極めておざなりなであった。2030年に向けた基本方針としては、エネルギーミックスの確実な実現へ向けた取組の更なる強化を行い、2050年に向けては、脱炭素化への世界的な潮流を考慮し、エネルギー転換・脱炭素化に向け、あらゆる選択肢の可能性を追求していくこととしており、極当たり前のことを言っているだけで、そこには主義・主張は何もない。
原発事故の反省を肝に銘ずると言いつつ、将来の原発の在り方を避け、脱炭素化と一般化し、再生可能エネルギーと原子力エネルギーを同一レベルで論じ、当たりさわりの無い話となっている。
原子力関係の2030年目標は、依存度をできるかぎり低減するという方針の下、安全最優先の再稼動や使用済燃料対策など、必要な対応を着実に進める、としている。放射性廃棄物の処分地が未定である等、これまでの積み残し課題に対しては、相変わらず先送りで緊張感が全くない。
2050年目標において、原発は社会的信頼の回復がまず不可欠と位置付けている。そこで、人材・技術・産業基盤の強化にただちに着手し、安全性・経済性・機動性にすぐれた原子炉の追求、等の技術開発を進めていくとしている。
しかし、ここにおいても具体性が全くなく、過去の柵を抱え、将来の夢が描けない現状を如実に表している。将来の夢が語れないところに、若い人材は集まらない。原発のじり貧は決定的である。
原発業界は現在、稼働中あるいは稼働できる状態にあるのはわずか5基、新規稼働予定が大間原発と島根原発3号機の2基だ。許可を受けたが地元民からの反対等で再稼働していないのが9基であり、東電第1原発事故以前の60基に比較すると雲泥の差だ。
一方、急速な経済成長で電力需要が増える中国やインドでは今後も建設が続くとみられている。中国の原発建設は急激に拡大し、2026年には米国を抜いて世界最大の原子力発電大国になるだろう、と予測する識者もいる。
2018年5月現在、中国では高速炉実験炉を含めて37基の原発が稼働し、この他20基が建設中とのことである。しかも中国は2030年までに100基を超える原発の稼働を計画しているそうだ。
また、同時に原発の輸出も積極的に進めている。中国はパキスタンに原発を建設しているほか、昨年はケニアとエジプトとの間で原発の輸出に関する覚書に署名したそうだ。また、ルーマニアやアルゼンチンからも注文を取り付けており、中東やアフリカ地域の市場を集中的に開拓しているとのことだ。
日本では、原発事業が縮小傾向であるが、これまでの資産を外国で生かすべく、政府一丸となって努力しているが、見通しは甘くない。これまでの原発政策は政府主導で進められてきたため、政府としてもここで手を引くことは出来ないのだ。
日立製作所が英国西部に原発2基を新設する計画であるが、原発の建設工事の中核から、米建設大手ベクテルが離脱しそうとのことだ。福島原発事故以降、安全対策の為建設費の高騰で採算をとりづらくなっているためだ。
日立には痛手で、計画への支援拡充を英政府に求めているが、十分な譲歩を引き出せていないようだ。日立は事業の採算性が見込めなければ撤退も辞さない構えだが、原発を輸出したい日本政府の思惑もあって離脱は簡単ではない。更に政府は日立の大株主のはずだ。
日本は原発事業を海外で、活路を見出したいが、中国との競争になると、金銭面で太刀打ちできないようだ。安全性に関する技術面では日本の方が遥かに上を行っていると思うが、当然コスト高になる。安全性は何事もなければその性能を発揮できず、その効用はなかなか理解されない。
中国は国内の多数の建設で力をつけており、運用でも自信を深めているだろうが、慣れが一番恐ろしい。7年前の日本のように、この自信がそのうちどこかで破綻することを懸念するが、安全面を重視するのはその破綻以降であろう。それまで日本の原発事業は維持できるであろうか。2018.08.22(犬賀 大好-470)
しかし、中身は極めておざなりなであった。2030年に向けた基本方針としては、エネルギーミックスの確実な実現へ向けた取組の更なる強化を行い、2050年に向けては、脱炭素化への世界的な潮流を考慮し、エネルギー転換・脱炭素化に向け、あらゆる選択肢の可能性を追求していくこととしており、極当たり前のことを言っているだけで、そこには主義・主張は何もない。
原発事故の反省を肝に銘ずると言いつつ、将来の原発の在り方を避け、脱炭素化と一般化し、再生可能エネルギーと原子力エネルギーを同一レベルで論じ、当たりさわりの無い話となっている。
原子力関係の2030年目標は、依存度をできるかぎり低減するという方針の下、安全最優先の再稼動や使用済燃料対策など、必要な対応を着実に進める、としている。放射性廃棄物の処分地が未定である等、これまでの積み残し課題に対しては、相変わらず先送りで緊張感が全くない。
2050年目標において、原発は社会的信頼の回復がまず不可欠と位置付けている。そこで、人材・技術・産業基盤の強化にただちに着手し、安全性・経済性・機動性にすぐれた原子炉の追求、等の技術開発を進めていくとしている。
しかし、ここにおいても具体性が全くなく、過去の柵を抱え、将来の夢が描けない現状を如実に表している。将来の夢が語れないところに、若い人材は集まらない。原発のじり貧は決定的である。
原発業界は現在、稼働中あるいは稼働できる状態にあるのはわずか5基、新規稼働予定が大間原発と島根原発3号機の2基だ。許可を受けたが地元民からの反対等で再稼働していないのが9基であり、東電第1原発事故以前の60基に比較すると雲泥の差だ。
一方、急速な経済成長で電力需要が増える中国やインドでは今後も建設が続くとみられている。中国の原発建設は急激に拡大し、2026年には米国を抜いて世界最大の原子力発電大国になるだろう、と予測する識者もいる。
2018年5月現在、中国では高速炉実験炉を含めて37基の原発が稼働し、この他20基が建設中とのことである。しかも中国は2030年までに100基を超える原発の稼働を計画しているそうだ。
また、同時に原発の輸出も積極的に進めている。中国はパキスタンに原発を建設しているほか、昨年はケニアとエジプトとの間で原発の輸出に関する覚書に署名したそうだ。また、ルーマニアやアルゼンチンからも注文を取り付けており、中東やアフリカ地域の市場を集中的に開拓しているとのことだ。
日本では、原発事業が縮小傾向であるが、これまでの資産を外国で生かすべく、政府一丸となって努力しているが、見通しは甘くない。これまでの原発政策は政府主導で進められてきたため、政府としてもここで手を引くことは出来ないのだ。
日立製作所が英国西部に原発2基を新設する計画であるが、原発の建設工事の中核から、米建設大手ベクテルが離脱しそうとのことだ。福島原発事故以降、安全対策の為建設費の高騰で採算をとりづらくなっているためだ。
日立には痛手で、計画への支援拡充を英政府に求めているが、十分な譲歩を引き出せていないようだ。日立は事業の採算性が見込めなければ撤退も辞さない構えだが、原発を輸出したい日本政府の思惑もあって離脱は簡単ではない。更に政府は日立の大株主のはずだ。
日本は原発事業を海外で、活路を見出したいが、中国との競争になると、金銭面で太刀打ちできないようだ。安全性に関する技術面では日本の方が遥かに上を行っていると思うが、当然コスト高になる。安全性は何事もなければその性能を発揮できず、その効用はなかなか理解されない。
中国は国内の多数の建設で力をつけており、運用でも自信を深めているだろうが、慣れが一番恐ろしい。7年前の日本のように、この自信がそのうちどこかで破綻することを懸念するが、安全面を重視するのはその破綻以降であろう。それまで日本の原発事業は維持できるであろうか。2018.08.22(犬賀 大好-470)