世界中に張り巡らせたネットワーク等の情報手段の発展、大量の情報を即座に解析するAIの発達、流通を簡単にする電子マネーの発展等は、グローバル経済を助長し留まるところを知らない。世界のグローバル化は様々な恩恵をもたらす一方、欠点もさらけ出した。
グローバル経済は本質的に経済格差を助長する。より多くの利益を求める投資家と、より安く良いものを求める消費者の期待に応えるため、企業は世界中に生産・販売網を展開して、効率化を追及する。効率化の中には賃金を始めとするコストダウンもあり、富の平等化の考えは毛頭無い。
しかも、このようなグローバル資本主義を規制することのできるグローバルな取り決めは現時点では存在しない。一方世界には国家の国内総生産 (GDP) を軽く超える多国籍企業が多く存在し、市場を獲得するために国境を越えて資金と物資を自由に動かすことが出来るのだ。
経済が発展した国にあっても、全ての人が平等に恩恵を受ける分けでなく、スーパマーケットで世界中の食料が安価で手に入る一方、社会の構造変化により職を失い、日々の食料も買えない人も出てくる。
しかもそのような国には、発展途上の国から多数の移民が殺到し、ゴミ掃除等低賃金で人の嫌がる仕事を引き受け社会を下支えする。しかし、一部の人々には仕事を奪われたとしか思われず、今の生活がなぜ苦しいかの疑問は移民の人々に向う。
これらの人々にいち早く注目したのは米国のトランプ大統領だろう。今月19日、来年の大統領選に再出馬することを宣言した。大統領のマスコミ評は極めて悪いが、それでも支持率40%程度の熱烈な支持層が存在し、再選されるのもあながち否定できないようだ。
トランプ大統領の自国第1主義は世界中に広がりつつあり、欧州各国でもこの気配が出始めており、フランスの移民排斥を掲げる極右国民連合を率いるルペン党首が代表格だ。
さて、EU加盟国では、5月23日~26日に、5年に一度の欧州議会選挙が行われた。選挙前には、ポピュリズム政党の躍進が広く予想されていたが、選挙結果は予想を裏切った。
これまで欧州議会は、EPPと、S&Dの二つの会派が大連立を組んで過半数を制し運営してきたが、今回両党あわせても過半数を取れず、これまでの方針を一部変更せざるを得ないであろう。
その代わりに伸びたのが、リベラル系のALDE会派だそうで、各国の自由な経済活動を規制するのは反対であるが、反移民までは主張していないようだ。これらの3つの会派が連立すれば過半数を制し、これまでの運営から大幅な変化は無く、一安心とする見方が有力である。
ポピュリズム政党が延びなたった理由は、一つには、ポピュリズム政党の躍進に危機感を抱いた有権者が、広く選挙に参加したためだそうだ。
EUの前身のECは、第2次世界大戦の反省を受けて、欧州が一つの共同体になろうと作られたが、この共同体の崩壊を恐れた結果であろう。しかし、今回の選挙結果を見ると、ポピュリズム政党が確実に伸びており、EUの方向が変わり始めている気配が濃くなっている。グローバル経済の見直しも必須となろう。2019.06.22(犬賀 大好-557)
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