ロシアのウクライナ侵攻は、わが国の安全保障にも大きな影響を与えている。ウクライナ侵攻はプーチン大統領が仕掛けた戦争であり、ウクライナがロシアを離れ西側諸国に接近しようとしているのを拒もうとしてウクライナに傀儡政権を樹立することが目的であった。プーチン大統領に抵抗するウクライナに人道問題は二の次ばかり圧倒的な軍事力で破壊攻撃する行動を目にした周辺の国々は自分の国は自分で守らなくてはならないと一斉に軍事力の増強に乗り出した。
また、中国も台湾は自国領土だとして武力統一を匂わせている。ゼロコロナ政策の失敗による国内の混乱を外交問題に振り向けないよう願うばかりだ。台湾を巡り米国と中国の衝突が現実味を帯び、日本は蚊帳の外で様子見と言う訳にはいかない。
さて、我が国の防衛関係費は、2022年度当初予算で5兆3145億円であり、目下国内総生産(GDP)比が1%程度である防衛費を、今後5年以内に2%以上へ引き上げるべく、政府は動き出している。この動きは日本独自の動きではなく北大西洋条約機構(NATO)の動きと関係している。
2014年当時、NATO加盟国であるEU諸国において国防費対GDP比は、平均で1.19%だったが、2019年には1.53%に上がった。今般のウクライナ侵攻を受けて、国防費の対GDP比2%目標を表明するNATO加盟国が次々と出てきた。
特に、NATO加盟国のドイツは、2022年から国防費を対GDP比2%とすべく予算を組んだ。2021年は1.49%だったところから2%にまで大幅に増額することになる。そして、福祉国家として知られるNATO非加盟国のスウェーデンも、国防費を対GDP比で2%にすることを表明した。
我が国の防衛費は対GDP比1%でも高過ぎるとの意見もあったが、ウクライナ侵攻の影響か今年10月のNHKの世論調査で防衛費増額に対する賛否を聞いたところ「賛成」が55%で「反対」の29%の約倍となった。
自民、公明両党は12月7日、防衛力強化に関する幹部協議会で、2023年度から27年度までの5年間で総額約43兆円となる防衛費の大幅増を巡り、歳出改革や決算剰余金などで賄えない不足分について増税で対応する方針を確認した。これに対し、防衛力強化の中身に対する疑問や財源に対する議論が活発となっている。
防衛費の増額は日本の国内事情より先進国に歩調を合わせるためであろうので中身はこれから煮詰めるのであろう。一方、政府・与党は11日、防衛費増額の財源に法人税、たばこ税、東日本大震災の復興特別所得税を充てる調整に入った。これまで必要な財源は安倍元首相以来、赤字国債に頼り勝ちであったが、将来につけを回すやり方は、将来大きなしっぺ返しを食う。1千兆円を越す国の借金は増税してでも減らす努力をしなくてはならない。2022.12.14(犬賀 大好ー871)
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