岸田首相は ”少子化はこれ以上放置できない待ったなしの課題”と強調して異次元少子化対策を提唱しているが、歴代の政権も同様な問題意識で何等かの対策を講じてきたが、出生率の回復等目的は達せられていない。今回の少子化対策の柱は、・児童手当など経済的支援の強化、・学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充、・働き方改革の推進、の三つとなるようだが、考えられるすべての項目を羅列しただけとの感が強く、これでは出生率の回復を余り期待できない。
日本に限らず、東アジア圏においては出生数の減少はすべて婚姻数の減少で説明がつくのだそうだ。スウェーデンでは未婚のまま子どもを産む事が社会的に認知されているようだが、少なくとも日本では認知されていない。子育て支援云々以前に、結婚できない状況が出生減の主要因なのである。出生数の増加には婚姻数の増加が必須なのだ。
先述の3つの柱の一つ働き方改革において、結婚して子育てするためには、・安心して出産できる環境支援、・両立支援・両立できる働き方、・継続的な男性の家事・育児参画 等が鍵となる、として様々な改革を提案している。結婚後の安定した家庭を築ける環境の確保が重要であることは言うまでもないが、その前に男女の出会いが無いと結婚に至らない。そもそも先述の3つの柱は婚姻数の増加には間接的には関係するが直接関係しないのだ。
男女の出会いは、一昔前はお見合いが主流であり、近所のお節介おばさんが大活躍していた。お見合いは、結婚を希望する人同士が、第三者の仲介によって対面する慣習である。厚生労働省の発表した「2015年版厚生労働白書」によると、2010年~2014年においてお見合い結婚は5.5%、恋愛結婚が87.7%であり、一方、1935~1939年にはお見合い結婚が69.0%、恋愛結婚が13.4%とのことだから、ここ70~80年の間に結婚を取り巻く環境がすっかり様変わりしたのだ。
最近は、結婚相談所やマッチングアプリが主流との話だ。筆者のような高齢者にはマッチングアプリなど別世界の話だが、これらの手段に躊躇する若者も多くいるのだろう。家族制度が崩壊し、個人の意思が尊重される時代となっても、心は時代についていけない若者も多くいるのだ。
また、働き方改革により女性の社会進出が多くなり、昔に比べると収入が安定し、趣味に価値を見出し、若いうちに結婚を選ぶことが幸せではないと女性の晩婚化が進んでいるそうだ。晩婚化は当然出生率の低下につながる。働き方改革は、結婚した若者に対して出生率の上昇に役立つが、未婚の女性に対しては逆効果となる恐れもあるのだ。兎も角、政府の掲げる異次元の少子化対策では出生率の上昇は期待できない。
政府は、婚姻数の増加にもっと配慮すべきである。このための工夫、例えばお節介おばさんの育成や結婚祝い金の支給、等検討すべきであろう。2023.05.13(犬賀 大好ー914)
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