日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

2050年までに実質ゼロにする温暖化対策の本気度は

2020年11月07日 09時16分28秒 | 日々雑感
 菅義偉首相は今年10月26日の臨時国会で初の所信表明演説を行い、その中で温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を宣言した。これまでの日本の温暖化対策目標は、まず2030年の温室効果ガス排出量を2013年比で26.0%削減し、さらに2050年までに80%を削減する等、複雑で分かり難いものであったが、それを”50年に実質ゼロ”と極めて単純明快で分かり易いものとした。

 温暖化対策の国際ルール「パリ協定」には、産業革命以前からの気温上昇を1.5℃以内に抑える目標があり、実現するには2050年までに世界全体の温室効果ガス排出を森林吸収分などを差し引いた実質ゼロにする必要があるとされるが、それに応えたのだ。

 菅首相の宣言に先立ち欧州連合(EU)の環境相会合が10月23日開かれ、温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする目標に法的拘束力を持たせる”欧州気候法案”が合意されていた。

 小泉環境相は昨年12月の気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)の閣僚級会合に出席したが、日本では石炭などの化石燃料発電が大半を占め、大量の炭酸ガスを排出していると各国から批判されていることに対し、悔しい思いをしていたことだろう。世界では最大排出国の中国でも今年9月、2060年までに「実質ゼロ」とする目標を掲げた為、小泉環境相は焦っていたに違いない。

 米国トランプ大統領は削減に消極的であるが、次期大統領にほぼ決まったバイデン前副大統領は積極的この問題に関わると見られており、菅首相の所信表明も慌てて世界の時流に乗った感もするが、取り敢えず評価すべきであろう。

 問題はその具体化策である。削減には日本のエネルギー基本計画が大きく関係している。2018年に閣議決定された計画では、2030年までに原発比率 20~22%、再生可能エネルギー 22~24%、石炭26%とされているが、炭酸ガスを排出しない原発は東電第1原発事故のため安全神話がぶっ飛び今後の再開目途が立たない状態で、現状日本の主力は化石燃料を使用する火力発電が約8割を占めている。

 梶山経産相はエネルギー基本計画の改定に向けた議論を10月13日に開始すると言明したが、焦点は 2030年に向けた電源構成である。理想的には、火力発電分を再生可能エネルギーに転換することであるが、そのためには革新的な技術開発が必要である。

 次世代型太陽電池、風力発電や蓄電池、また二酸化炭素を有効利用するカーボンリサイクルなどの次世代技術の実用化に向けた研究開発が必須となる。特に蓄電池は自然エネルギーの不安性さをカバーする技術として早くから注目されているが、未だ飛躍的な技術は生まれていない。科学技術立国を目指す日本としては国を挙げて取り組まなくてはならない。

 また、原発事故後に電力供給は自由化されたが、まだ各種規制が残るため一層の規制改革やグリーン投資の普及も必要となるだろうが、菅政権は何処まで本気を出すだろうか。真価が問われる。2020.11.07(犬賀 大好-649)


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