本日、1月20日はバイデン大統領の就任式でいよいよ船出だが、行く先棘の道が予想される。ところで、今月5日に米ジョージア州で行われた上院議員選の決選投票で、民主党が2議席を獲得し、これにより、上院(定数100)は民主党50、共和党50の同数となり、決選投票の場合副大統領の意見で決まることになるため、政権運営が容易になったようだ。上院は法案採決のみならず、大統領が指名した閣僚や判事の承認権や条約批准同意権をもち、権限が強いからだ。
既に下院(定数435)でも過半数を維持しており、大統領・議会が一体となって人事や政策を推し進められることになりそうで、目出度し目出度しと言いたいが、そうでもないようだ。閣僚も黒人、ヒスパニック系、アジア系と、政権の特徴である多様性が表れているが、肝心の民主党内の左派勢力が獅子身中の虫になる懸念もありとのことだ。
さて、新大統領の行く先は、外交問題、国内問題共に難題だらけである。国内の当面の最大課題はコロナウイルス対策であろうが、その後の社会の分断問題では、税による富の再配分で左派勢力を納得させる必要がある。
外交問題では、トランプ大統領が在任中、米国第1主義に基づく中国との貿易戦争開始、地球温暖化に対するパリ協定からの離脱、イランとの核合意離脱、更にロシアとの中距離核戦力全廃条約(INF)破棄等、国際協調を乱しっ放しで表舞台から退いた。バイデン新大統領は理念として”分断から協調へ”を掲げているが、これらの問題にどのように向き合うか、具体案が示されておらず、どれも解決が容易でないことを暗示している。
特に対中国政策に関しては、貿易問題や安全保障問題が待ちかまえている。バイデン氏は安全保障や国内産業保護の観点から中国経済への依存を低減させる脱中国化を主張しており、この点ではトランプ前大統領の強硬路線を引き継がざるを得ないだろう。
貿易に関し、トランプ大統領の追加関税問題等で昨年の米中間の貿易は極めて低調であったと思い込んでいたが、昨年の米国の対中国貿易赤字は約33兆円となり、前年度から7.0%も増えたとのことだ。トランプ氏の対中国貿易赤字削減計画で、2019年の両国間の貿易総額が前年より14.5%減ったが、2020年の貿易総額は前年より8.3%伸びたそうで、結果として赤字も増えたのだ。政府の意向に拘わらず、民間の自由貿易志向が上回っているようで、脱中国化政策も厳しくなりそうだ。
さて、日本も関係するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に関しては、まだ方針を示していない。TPPはオバマ元政権が貿易面での中国との対抗を視野に推し進めたが、トランプ前大統領が米国の利益にならないと離脱してしまった。中国は米国の穴を埋めようと参加を希望しているようだが、世界貿易のルールづくりで中国が主導権を握ることを阻止するため、米国は関係国と結束していく必要性を強調しているが、TPPに再加入に踏み切るであるだろうか。
自由で開かれたインド太平洋、安全なインド太平洋と称し、日本、オーストラリア、韓国との同盟関係をさらに深めていくつもりのようであるが、日本としては既に経済的に深く結びついた中国との関係をどうするか難しいかじ取りが待ちかまえている。2021.01.20(犬賀 大好ー671)
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