規制緩和とは、自由競争を制限する公的規制を撤廃・緩和して、経済の活性化を図ることが狙いである。このため、歴代の政権はビッグバンと呼ばれる銀行、証券、保険会社関係の規制緩和をしたり、通信事業や郵政事業の民営化等の規制緩和を行ってきた。
これらの規制緩和における規則や法律の改正は、時代の流れと共に経済活動の活性化にそぐわなくなった為、経済界からの強力な後押しがあってなされたであろう。しかし、経済活性化とは直接関係が無く、時代に合わなくなった規則や法律も多々あるが、改正によって利益を得る団体が小集団であったり集団のまとまりが無かったりするとなかなか改正が実現されない。
2017年、日産自動車やスバルで発覚し、最近ではスズキ自動車で発覚した自動車の最終検査での無資格検査がある。最終検査とは、道路車両運送法に基づいて国道交通省が定めた通達によるが、この通達で定められた有資格者とは、どのような技能が求められるかは明確に定義されておらず、能力をもった人を会社が指名するといった程度であるそうだ。
スズキ自動車は2017年当時無資格検査をしていないと国に報告していたが不正が最近明らかになった。自動車業界は価格競争が激しく、検査要員の縮小や検査工程の省力化が自動車業界の共通の常識のようである。また、各製造工程における検査が十分行われているため、最終検査は不要との雰囲気も現場にあるようだ。この点トヨタに不正が無いとは、さすがに世界のトヨタだ。
国交省は、規則は規則と民間企業に押し付けている。民間の検査部門では検査担当の要員を減らされた上、営業等の他部門から督促され検査を省くこともあったようだ。多少省いたところでお客さんの所で事故が起こった例もなく、法律違反になるとの認識が無くなったか、あるいは薄くなっていたことだろう。しかし、だからと言って、罪に問わなくてはこの検査を見張るお役所の存在意義が無くなってしまう。
従って、最終検査の必要性は、自動車の安全性の確保より、お役所の仕事確保のためにあると言えるであろう。このように時代に合わない法律や規則が後生大事に長年守られている例は各所に見られるが、関係者の努力により廃止されたものもある。
古くは1931年の、強制隔離によるハンセン病絶滅政策という考えのもと、在宅の患者も療養所へ強制的に入所させるようにした、癩予防法がある。この法律は1996年に廃止された。
最近訴訟問題で話題となっているのは優生保護法である。不良な子孫の出生防止などを目的に、1948年に施行された。遺伝性の疾患や精神障害、知的障害などと診断され、都道府県の審査会で適当とされた場合、本人の同意がなくても不妊手術ができた。
1996年に母体保護法に改正されるまで、全国で少なくとも男女1.6万人が不妊手術を強いられたとされる。現在、20人ほどの被害者が国を相手に訴訟を起こし、最初の判決は5月末に出る予定だそうだが、癩予防法や優生保護法の廃止、改正は関係者の強い熱意があったからだ。
さて、現在全国的に空き家が激増し、全国で放置空き家が問題視される中、空家等対策の推進に関する特別措置法が2014年に成立したが、放置空き家は増える一方である。原因の一つに更地にすると固定資産税が高くなると言う決まりがある。更地にするには金が必要で、更地にしても容易に転売できる時代ではなく、更地にすれば税金が上がる。これでは敢えて更地にする人間は居ない。この規則こそ改正されるべき一つであるが、国会議員も票に結びつかねば動き出さない。2019.05.22(犬賀 大好-548)
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