大阪万博会場中心部を取り囲む木製のリングは建設費が約344億円、幅30メートル、高さ12~20メートル、1周2キロで来場者は屋根の上と下を回遊でき、完成すれば「世界最大級の木造建築物」となることが売りだそうだ。この木造建築物は、日本の伝統工法である「貫工法」と呼ばれる柱と柱の間に「ヌキ」と呼ばれる木材を入れて組み上げられておるのだそうだが、本来は木と木の間の固定用には金属類は一切使わずすべて木だそうだが、ここではクギや金属板やボルトも使われており、またリング本体はフィンランドのアカマツ材による集成材を用いていることから日本伝統工法による建築物と宣伝するにはちょっと無理があるようだ。
万博を訪れた人はこのリング上を散策しながら、万博の理念である「多様でありながら、ひとつ」を噛みしめる為のシンボルだそうだが、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるパレスチナのガザへの侵攻等、世界は争いが絶えない現状を考えると空しく感ずるのではないだろうか。また、万博へイスラエルは参加するのことだが、来年4月の開幕までにパレスチナとの間に戦争が終結し和平が進み、世界はひとつと胸を張ることが出来るのであろうか。また、ロシアは、「ホスト国との意思疎通が不十分だ」と訳の分からぬ理由を付けて万博からの撤退を表明しているが、ウクライナとの戦争で万博参加の余裕が無いのだろう。万博からの撤退ではなく、ウクライナからの撤退であれば、世界は大歓迎だし、リングの理念は輝いたことだろう。
このリングも184日間の会期が終わると撤去する予定であったが、税金の無駄遣いとの声も大きく、日本国際博覧会協会は、大阪万博の取り組みを一過性のイベントで終わらせることなく、後世に引き継ぐレガシーとして残していけるよう、有効に活用する可能性を検討しているそうだ。しかし、再利用するにしても「世界最大級の木造建築物」の特徴が逆に仇となりそうだ。世界はひとつのコンセプトを重んずれば、バラバラにする等は以ての外であろう。纏めて移すとなれば、莫大な費用と広い空き地を探さねばならず住民の少ない地方にならざるを得ない。従って万博跡地を公園にしてそのまま残すことが一番の経済的な方法であろうが、木造なだけに維持費が高くなりそうだ。この維持費を賄う為に集客効果がある公園としなければならないが、大阪人の好みの”ごちゃごちゃ”感を出すためには広すぎる感じもする。
持続可能な社会やインクルーシブ社会の実現が世界的な課題になっている現代、一方では地域紛争が激化する現代、「多様でありながら、ひとつ」を理念とするリングが万博が終わってもレガシーとして残ることを祈るばかりである。2024.03.02(犬賀 大好ー988)
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