運転開始から40年を超えた関西電力の3基の原子力発電所について福井県の杉本知事は4月28日、運転の延長に同意する考えを表明した。知事は当初、同意の条件として原発にたまり続ける使用済み核燃料を県外に運び出す中間貯蔵施設の候補地の提示を関西電力に求めていたが、選定は難航していて、候補地の確定は2023年末に先延ばしとなっている。
それにも拘わらず、原発再稼働に同意したのは経済的な理由、特に交付金の魅力に負けたためであろう。国は1原発あたり25億円を最高とする交付金や、立地地域に対する恒久的福祉の実現も約束しているようだ。
知事は、地元の町、県議会などの意見を総合的に勘案した、と再稼働に同意した理由を述べたが、27日杉本知事と梶山経産相がオンライン会談し、そこで交付金等について話し合われ、再稼働同意となったのであろう。
政府は2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを定め、菅首相も今月、温室効果ガス排出量の2030年度削減目標を2013年度比で46%減に上方修正したことから、既存原発の活用を積極的に進めるべく、梶山経済相に発破をかけていたのだろう。
老朽化した原発の安全性や、周辺自治体にも及ぶ事故時の避難計画の実効性の懸念は根強く残るが、地元の住民からは再稼働歓迎の声も聞かれるとのことだ。原発の地元である美浜町や高浜町は、元々過疎地域なため原発を誘致したのであろうから、原発は地域を潤す産業なのだ。原発が出来れば、そこで雇用される人や生活する人が増え、地元は経済的に潤うようになるからだ。
「安全の確保」「立地地域の理解と同意」「地域の恒久的福祉の実現」など、知事は以前から重視してきたが、そこには大勢の人が生活していることが大前提なのだ。大勢の人が生活するためには経済的な裏付けが必要となる。
さて7年前こんな出来事があった。2014年6月、東京電力福島第1原発事故の除染で出た汚染土の中間貯蔵施設に関し、建設に向けた地元との調整において用地の補償などをめぐり調整が難航していたが、石原伸晃環境相が「最後は金目でしょ」と発言し、この発言で住民側はさらに態度を硬化させた。国や地元との調整に当たっていた福島県も反発し、佐藤雄平知事は「避難している人、県民の気持ちを踏みにじるような発言だ」と強く批判した。
石原環境相のこの発言は余りにも本心を言い当てていたため反発が大きかったが、本質はその通りだろう。先述の福井県知事にしても打ち出の小づちを手にしながら、使わない手は無いと判断したに違いない。最後は金目なのだ。
福井県が県外への搬出を求めている原発の使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設について、関電は青森県むつ市を候補地として提示したが、同市は受け入れないことを明確にしている。関電は2023年末までに施設の計画地を確定できない場合、3基の原発を停止すると明言しているが、結局は関電あるいは国は札束で解決することになるだろう。
2021.05.05(犬賀 大好ー700)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます