日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本の社会はたるんでいる

2015年09月12日 09時03分12秒 | 日々雑感
 東京オリンピックのエンブレムが白紙撤回された。原因は、佐野氏が作成したロゴマークが国民的な支持を得られなくなった為とのことである。東京の頭文字Tをデザインしたエンブレム自体はベルギーの何とか劇場のロゴとは似てはいるものの、色使い等の点で佐野氏のオリジナリティがあると信じたいが、佐野氏の過去の作品に盗作まがいのものが多数見つかったことが、印象を悪くしたようだ。
 混乱の責任について、組織委員会の武藤敏郎事務総長は記者会見で、組織委、デザインの審査委員会、佐野研二郎氏を念頭に「三者三様」と述べ、誰一人責任を負わないようである。
 今回に限らず、大混乱の責任を誰一人負わない事件は数多い。経済同友会の代表幹事が「社会全体がたるんでいるんじゃないか」と苦言を呈したとのことだが、全く同感である。
 大事件にも拘わらず誰一人責任を負わない事件は他にいくらでもある。
 JR西日本の福知山線で発生した列車脱線事故では、乗客と運転士合わせて107名が死亡したが、裁判では事故は予見できなかったとして起訴された全員が無罪となった。
 福島第1原発の事故は、東日本大地震の際の津波により、電源喪失が発生し、炉心融解の大事故となったが、このような大津波は誰も予測できなかったとして、東京地検は東電の勝俣恒久元会長ら3人を不起訴処分にした。
 新国立競技場に関しても、当初の予算1300億円程度をはるかに越える3000億円程度になるとの見込みで白紙撤回された。撤回に伴い約62億円の損失が生じたが、誰一人責任を取りそうにもない。お金の無駄ばかりでなく、無駄な時間も費やされた。
 予算を大きく上回る建設費の目途も無く、かといって見直しの決断も出来ないまま時間が経過し、ようやく安倍首相の鶴の一声により白紙撤回が決まった。この一声により安倍首相の支持率が一気に上がると思っていたが、そうではなかった。オリンピックという大事業を烏合の衆に任せていた責任を問われているのであろう。
 まさに“お役所仕事”がまかり通っているのだ。JRも東電もお役所ではないが、このような大企業はお役所と同じ体質なのだ。お偉方はただお神輿の上で胡坐をかいておればよいのであり、明日は昨日と同様であると信じ、想定外のことを心配する必要が無いのだ。予算をオーバーしたところで、毎度のことだとしばし首を竦めておれば、すぐに忘れ去られるのだ。この緊張感の無さ、平和ボケ、たるみは、今に始まったことでは無いが、最近やけに目に付く。
 さて、新国立競技場の仕切り直しも、建設費予算1550億円以下と決まったが、総責任者は遠藤五輪担当相であろうか。オリンピック組織委員会会長に森元首相が依然として居るが、彼を御し切れるであろうか。結果的にこの予算は何かと理屈をつけて超えることになろうが、誰も責任を取ることにはならないであろう。日本のたるみはまだまだ続きそうである。(犬賀 大好-163)

積極的平和主義と積極的平和

2015年09月09日 09時22分32秒 | 日々雑感
 「積極的平和主義」を御旗に、安全保障政策の大転換を安倍首相は目論んでいる。自衛隊を世界各地に派遣して戦争を抑止するのが積極的平和主義と思っているようだ。
 一方、ノールウェーのヨハン・ガルトゥング博士は半世紀前から「積極的平和」を提唱しているのだそうだ(朝日新聞2015.08.26)。博士によれば、憲法9条にしがみついて何もせず、戦争の無い状態を保つのを「消極的平和」と称し、貧困や差別といった原因から発生する国際紛争を積極的に無くそうとするのが「積極的平和」と称するようだ。安倍首相の積極的平和主義も本当に戦争を抑止することになれば、博士の積極的平和と通ずるかもしれないが、現状では全く異なるもののようである。
 博士は50年も前から「積極的平和」を提唱しているとなれば、しっかりした哲学、理念、思想に支えられているはずである。安部首相にも裏づけされる哲学はあるのであろうか。祖父である岸信介元首相が、世論の反対を押し切って日米安全保障条約の改定を行った。現在の日本の繁栄は米国に依存するところが大きいと思われるので、この条約も大いに役立っているに違いなく、大多数の日本国民もそうと信じているであろう。安倍首相のやる気は岸元首相の功績にあやかりたい一心のような気がする。
 現在、シリアや北アフリカ各国から欧州を目指す難民が何十万人と話題になっているが、この難民のきっかけを作った一因は、米国の積極的平和の考えによると思われる。すなわち、民主主義は絶対的に善であるとの確信の下、独裁政治に抑圧される人民に民主主義をもたらそうと政治的、軍需的に介入し、その後の大混乱を引き起こし、大量難民を生み出したわけだ。ヨーロッパ諸国は難民受け入れに大混乱であるが、米国も責任をとり一部受け入れるであろう。難民受け入れに関しては日本は相変わらず、難色を示すであろう。
 世界には、問題が蓄積している。上記の難民問題や核廃絶問題等、積極的平和主義の出番はいくらでもあるが、安倍政権はこれらの問題に真正面に向き合う覚悟が出来ているのであろうか。
 博士によれば、日本の外交問題は米国一辺倒で政策が硬直化しており、創造性がまったく無いとのことだ。博士は、例えば、ヨーロッパにおけるEUを見習い、北東アジア共同体の創設を提案している。メンバーは、日本、中国、韓国、北朝鮮、極東ロシアであり、そこで領土権を主張しあっている尖閣諸島、竹島、北方4島を共同管理する等である。
 政府は8月28日尖閣諸島や竹島が日本固有の領土であることを裏付ける資料約200点をインターネット上で公開した。対外的に領有権をアピールするとともに、国民の理解を促すことが狙いであるが、中国や韓国が納得するはずが無く、刺激するばかりである。また、ロシアのモルグロフ外務次官は、9月2日、北方領土問題に関し「私たちは日本側といかなる交渉も行わない。この問題は70年前に解決された」とまで述べた。このままでは、これらの島の領有権に関しては全く展望が開けない。北東アジア共同体も一つの考えであるが、安倍首相は積極的平和主義に基づく展望を開けるのであろうか。(犬賀 大好-162)

日本の成長戦略の限界

2015年09月05日 09時58分41秒 | 日々雑感
 昨年安倍政権は発足以来成長戦略をいろいろ打ち出した。成長戦略は歴代の内閣も打ち出しているがいずれも景気回復には結びつかず成功していない。景気の本格回復に求められるものは、「買いたいもの」を作り出す成長戦略であるが、それが具体的に何か分からないため、四苦八苦している。次善の策として、買いたいものを作り出すであろう環境を整備するのに資金を投じているのだ。
 例えば、法人税の引き下げは平成27年度税制改正で、法人税率を現行の25.5%から23.9%に引き下げられることになった。海外資金の日本への投資を促進する筈であったが、効果があったとの声は聞こえてこない。これは、円安の影響があるかも知れないが、何に投資すべきか、すなわち何が売れるか分からないためであろう。
 また、農業改革においては、農業の法人経営体数を2013年の1.4万から10年後に5万の目標を掲げた。自由な発想により農業の活性化を狙った策であろうが、この1年間で約1千法人の微増で、遅々として進んでいない。これも法人経営により、売れるものの具体的なイメージが浮かばないことが背景にあるのだろう。
 日本では、新しい産業がなかなか登場しないが、米国ではそうでもないらしい。朝日新聞によれば、創業から10年もたたずに企業価値が10億ドル(約1240億円)を超える巨大な非上場ベンチャー企業が、米国シリコンバレーで続々と生まれているそうだ。
 例えば、配車アプリ大手「ウーバーテクノロジーズ」の企業価値は400億ドル(約5兆円)を超え、ソニー(約4兆1千億円)をも上回ったとのことだ。この企業は2009年の創業で、自家用車のドライバーが空き時間を利用してタクシーのように客を運ぶサービスを仲介する事業を世界各国で展開するのだそうだ。日本では、このような活動は白タクとして違法な活動になるのであろうが、日本の規制の厳しさ、米国における発想の自由さを感ずる。
 また、自宅の空き部屋を貸す人と旅行者をネットで仲介するサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、サービス開始から7年足らずで企業価値が200億ドルに達したと報告している。旅行と言えば旅館やホテルに宿泊するものとの常識を覆す「一般住宅のホテル化」の新しい発想である。
 この他、ITに関する各種のサービスが名乗りを上げているそうだ。世界中からやる気のある人が集まり、自由な発想とそれに投資する環境整備は、日本の成長戦略でもおいそれと出来そうにもない。中国はGDPでは日本を追い越し、米国に迫っているが、その中身はコピー技術だそうだ。中国の経済失墜の原因の一因もこの辺りにある。日本で出来ることは、せめてこのような時の流れに乗り遅れないように、その周辺を固めることか。
 来年度の概算要求が8月31日に出されたが、案の定小型無人機ドローンの普及支援に17億円や人工知能などの研究強化に100億円が盛り込まれている。また、日本が得意とするロボット分野では、介護ロボット開発の加速度支援に5億円や燃料電池自動車の普及のための水素ステーション整備費補助に62億円が盛り込まれた。この分野での日本発のオリジナルを期待したいが、経済再浮揚に対する効果はあったとしても数年先であろう。(犬賀 大好-161)

ギリシャ人は怠け者か

2015年09月02日 09時59分19秒 | 日々雑感
 ユーロ圏の危機国を支援する救済基金「欧州安定メカニズム(ESM)」は8月19日、ギリシャに今後3年間で最大約12兆円の新たな支援を行うことを理事会で承認した。ギリシャはこの資金を欧州連合(EU)から受けた融資の返済などにあてる。財政破綻の危機は当面回避されたことになるようだ。
 そもそもギリシャの経済危機はなぜ起こったのか。ギリシャ人は余り働かない、納税意識が低い等のマイナスイメージが流布している。世界銀行の統計によれば、14年の一人当たりの国内総生産(GDP)は、ギリシャでは約270万円とドイツの半分以下と報告されている。原因は労働生産性の悪さや公務員の非効率な働き方にあるとのことだ。これでは、ギリシャ人は怠け者と烙印を押されても致し方ないだろう。
 文芸・批評家の池澤夏樹氏によれば、ギリシャ人は怠け者ではなく、統制を嫌う気質で、組織の一員として力を発揮できないとのことだ。ギリシャは、これまでの政権の人気取り政策のため公務員の数が他の国に比べ圧倒的に多いようだ。公務員は組織的に動いて力を発揮するはずであるが、組織されるのをいやがるようであれば、困ったものである。
 ギリシャ人が楽天的で陽気なのは、ラテン系の特徴かと思っていたが、ギリシヤ人は言語的にも宗教的にもラテン系には含まれないようだ。しかし、その気質には地中海沿岸の温暖な気候を享受するラテン系と共通のものがありそうだ。
 現在EUを引っ張るのは独と仏であるが、主としてメルケル首相率いる独である。独はもともと長子相続の直系家族で、個々人はかっては家族に、今日では集団に入る価値観が強く、組織として動くことが得意である。独人の多くはギリシャ人の協調心の無さを快く思っていないのであろう。メルケル首相はギリシャに財政の建て直しを強く迫っているが、ギリシャはなかなか言うことを聞かない。日本人も組織的に動くのを得意とする点では独にそっくりであり、ギリシャ人を理解するのは難しそうである。
 ヨーロッパは、狭い国土に多数の民族がひしめき合い、第2次世界大戦までは、紛争が絶え間なかった。この反省を踏まえECが誕生し、EUに発展し今日がある。気質の異なるゲルマン系とラテン系が曲りなりにも平和裏にやってこられたのは、このような努力のお蔭と思われるが、EU分裂を予言する論者も多い。
 国内経済引き締めを条件に欧州連合(EU)から巨額の金融支援を受け、議会が解散され、9月20日に総選挙が行われる。チプラス政権は、経済引き締めに反対して政権に付いたが、公約を無視してEUの支援を受けた。経済危機の再燃を防ぐには、引き締めを実行できる安定政権の樹立が不可欠だ。その実現の可否が、ギリシャと EU の将来を大きく左右しよう。(犬賀 大好-160)