日銀は7月31日の金融政策決定会合で、5年超続く異次元金融緩和の更なる長期化に備えることを決めたそうだ。しかし、今回の措置の本音は、金融緩和継続の強化の名目とは裏腹に、緩和の副作用への対応を主眼とした事実上の出口への模索でもあるとのことである。
副作用の一つは、銀行は貸し出し利ざやが稼げず、国債市場は取引が低調で市場機能が低下し、株価形成にも影響を与えているとのことだ。
現在、低金利による収益減でも金融機関が持ちこたえているのは、日本経済全体が好調で企業倒産が少ないからだそうだ。しかし異次元緩和が続いている間に、景気後退が始まる可能性があり、その時金融機関への副作用が噴出する恐れがあると識者は指摘する。
政府は、東京オリンピックまでは何とか好景気を維持しようと無理をしている節がある。一般に大きなイベント開催の1年ほど前から景気後退は始まるらしいので、現在の好景気も残すこと1年だ。
日銀は、異次元緩和を続けながらも副作用を減らそうと様々な工夫をしている。ゼロ%程度に誘導する長期金利の上限を0.2%程度と従来の2倍程度まで引き上げる方針、マイナス金利政策による金融機関の負担を抑える措置、ETFの購入方法を見直す、等であるが、経済素人にはその仕組みをよく理解できない。
兎も角、異次元緩和の中身をどんどん変えているが、出口に向かっているとは、はっきり言わない、否言えないのだ。異次元緩和の終了の宣言は、金融引き締めとなり即景気後退となるそうで、恐ろしくて言えないのだが、副作用の懸念はますます大きくなっている。
そこで日銀は2%の物価目標の旗を降ろさず、大規模な金融緩和を続けると表面上は主張する。その意思を明確に示すために、聞き慣れない”フォワードガイダンス”と呼ばれる手法を導入し、煙に巻いている。
これは現在の極めて低い金利水準を当分の間続けると約束した事になるのだそうだ。こうして日銀が金融引き締め方向の政策修正に動くとの観測を打ち消したが、既に国債買い入れ目標80兆円/年は40兆円台に減少し、長期金利上昇を容認する方向になっている。
今回の会合前には、物価がなかなか上がらない背景についても議論するとの噂であったが、今回もこれに関しては何も聞こえてこない。
筆者は、異次元緩和で天井知らずのインフレが起こるのではと心配していたが、今もって物価上昇率は1%に届かないようだ。年金生活者にとって非常に有り難いことであるが、一方では物価上昇がなぜ起こらないかは不思議に思っている。どうも経済専門の金融政策決定委員ですら、よく分かっていないと見える。分かっておればとっくに対策を講じている筈だ。
異次元緩和の副作用は、先述のように、銀行経営の悪化等であり、庶民一般には直接関係ないように思われる。それより、異次元金融緩和の一番の副作用は、経済格差の助長であると確信する。
日銀は大量に国債を買い込み、市場に現金を流した。この金は庶民一般に行き渡らず、大企業を潤し、投資家を潤した。そして金を有する者は益々豊かになった。
金を持た無い者は、物価上昇が無いだけに、これでも良しとしたが、物価上昇が顕在化すると、生活は苦しくなり、不満が高まるだろう。
政治に期待する国民の声の第1位は常に経済対策だ。異次元緩和を推進する安倍政権は物価上昇を目指すが、それが実現された時、寿命を迎える気がする。2018.08.11(犬賀 大好-467)
副作用の一つは、銀行は貸し出し利ざやが稼げず、国債市場は取引が低調で市場機能が低下し、株価形成にも影響を与えているとのことだ。
現在、低金利による収益減でも金融機関が持ちこたえているのは、日本経済全体が好調で企業倒産が少ないからだそうだ。しかし異次元緩和が続いている間に、景気後退が始まる可能性があり、その時金融機関への副作用が噴出する恐れがあると識者は指摘する。
政府は、東京オリンピックまでは何とか好景気を維持しようと無理をしている節がある。一般に大きなイベント開催の1年ほど前から景気後退は始まるらしいので、現在の好景気も残すこと1年だ。
日銀は、異次元緩和を続けながらも副作用を減らそうと様々な工夫をしている。ゼロ%程度に誘導する長期金利の上限を0.2%程度と従来の2倍程度まで引き上げる方針、マイナス金利政策による金融機関の負担を抑える措置、ETFの購入方法を見直す、等であるが、経済素人にはその仕組みをよく理解できない。
兎も角、異次元緩和の中身をどんどん変えているが、出口に向かっているとは、はっきり言わない、否言えないのだ。異次元緩和の終了の宣言は、金融引き締めとなり即景気後退となるそうで、恐ろしくて言えないのだが、副作用の懸念はますます大きくなっている。
そこで日銀は2%の物価目標の旗を降ろさず、大規模な金融緩和を続けると表面上は主張する。その意思を明確に示すために、聞き慣れない”フォワードガイダンス”と呼ばれる手法を導入し、煙に巻いている。
これは現在の極めて低い金利水準を当分の間続けると約束した事になるのだそうだ。こうして日銀が金融引き締め方向の政策修正に動くとの観測を打ち消したが、既に国債買い入れ目標80兆円/年は40兆円台に減少し、長期金利上昇を容認する方向になっている。
今回の会合前には、物価がなかなか上がらない背景についても議論するとの噂であったが、今回もこれに関しては何も聞こえてこない。
筆者は、異次元緩和で天井知らずのインフレが起こるのではと心配していたが、今もって物価上昇率は1%に届かないようだ。年金生活者にとって非常に有り難いことであるが、一方では物価上昇がなぜ起こらないかは不思議に思っている。どうも経済専門の金融政策決定委員ですら、よく分かっていないと見える。分かっておればとっくに対策を講じている筈だ。
異次元緩和の副作用は、先述のように、銀行経営の悪化等であり、庶民一般には直接関係ないように思われる。それより、異次元金融緩和の一番の副作用は、経済格差の助長であると確信する。
日銀は大量に国債を買い込み、市場に現金を流した。この金は庶民一般に行き渡らず、大企業を潤し、投資家を潤した。そして金を有する者は益々豊かになった。
金を持た無い者は、物価上昇が無いだけに、これでも良しとしたが、物価上昇が顕在化すると、生活は苦しくなり、不満が高まるだろう。
政治に期待する国民の声の第1位は常に経済対策だ。異次元緩和を推進する安倍政権は物価上昇を目指すが、それが実現された時、寿命を迎える気がする。2018.08.11(犬賀 大好-467)