ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

月刊ココア共和国 2020年4月創刊号 あきは詩書工房

2020-04-05 18:29:31 | エッセイ
 秋亜綺羅発行人、佐々木貴子編集人による月間詩誌の創刊である。秋さんは、仙台在住の詩人、これまで、季刊詩の形で「ココア共和国」を発行されてきた。
 新鋭詩人佐々木貴子氏を編集人に据え、月刊誌の発行という、無謀とも思える挑戦に踏み切った。紙媒体でも少部数作成しつつ、電子書籍としての販売を中心に据える戦略らしい
 秋さんは、1951年生まれか。私よりも5歳年上となる。詩人としての活動、尊敬すべき、見習うべき先輩である。一般的なイメージとしてありがちな、個人の枠の中に閉じこもった詩人ではない。詩の社会的な意義を確信し、というと少し違うのかもしれないが、いや、確信し、と言い切ってもいいのかもしれない、世の中に広く問いかけていこうとする姿勢は、現今、稀にみる、貴重なものに違いない。
 これは、内輪向けの同人誌ではない。
 創刊にあたって、秋さんは二つの新しい詩の賞を創設した。そして、宮城県詩人会から引き継いで、若者向けのひとつの詩の賞を復活した。詩誌への投稿が、同時に、これら3つの賞への応募とみなす、という。ただし、年間2回以上の投稿を必要とする。
 新しい二つの賞とは、秋吉久美子賞、いがらしみきお賞。若者向けは、YS賞である。YS賞に限っては、10代以下限定である。
 いがらしみきお氏は、仙台在住のマンガ家で、もちろん高名な方であるが、私などは、なんといっても秋吉久美子氏の名まえに反応してしまう。
 デビュー当時、同じ東北地方出身のとても美しい、そして、どこか芸術家風のイメージをまとった女優。磐城女子高出身で、東北と言いながら最南端、ほとんど東京に近い、と思えたが、でも、東北地方であることに間違いはない。わたしより2歳だけ年上、どこか身近なと、かん違いもしてしまう、憧れの先輩、のような。
 秋吉久美子の名に魅かれて、わたしも投稿してみたい、と思ってしまう。
 鈴木そよか、という若い歌人による巻頭歌は、

「死にたいと生きたくないは違うもの午前7時のアラームが鳴る」

というもの。
 確かに、「死にたい」ということと「生きたくない」ということは、全く違う意味合いがある。一方は叫びかもしれないし、一方はようやく絞り出す呻きかもしれない。一方は、苦しみでなく実は青春の喜びであるかもしれない。言葉の色合いの違いを的確に使用した表現となりえた。
 20ページには、招待短歌として、見開きに十篇の短歌を掲載している。
 2001年生まれ、宮城県在住の大学1年生、角川の大きな賞も受賞しているとのこと。
 YS賞は、宮城県詩人会会員だった佐藤達雄氏の遺志を受け、第5回までは、宮城県詩人会として行ってきたもので、20歳未満対象とし、その運営には、秋亜綺羅氏が中核的に関わってきたものだが、今回、一般財団法人あきは詩書工房が引き継ぐこととした由。20歳前後の若い詩人たちにそそぐ秋さんのまなざしは、固い意志に裏付けられている、と思う。
 つまりは、詩の未来を見据えているということ。そこには、秋さんの確信がある。
 この旗揚げに期待を込めて、私なりに伴走させてもらえるならば、このうえない。年間購読の申し込み済みで、創刊号が届いたところである。

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