ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

夏の情景

2009-03-08 21:37:00 | 寓話集まで
明るく晴れ上がった夏の日
西の空に積乱雲とまでいえない雲があり
東よりに積雲がしっぽをのばし
上空に絹雲が真綿のようにひきちぎられ

家々がくっきりと光に照らされ
川岸の二本のポプラの大樹と丘の斜面に広がる杉の森やあちらこちらの広葉樹たち
国道の橋を往来する自動車の走る音は聞こえるが
夏の静寂が中空を覆っている

立秋を過ぎたから
風はもう夏のものでないと
むかしの京都盆地の住人はことばのあやとしてあるいは早く涼しくなってくれと願望を込めて歌った
しかし
東北の太平洋岸に住むわたしたちは
ああ
まだ熱い砂で足の裏が焼ける正午の海水浴に行っていないのにと
悔恨をいだいて
乾いて冷たさのある風に吹かれる

さざ波の立つ川面にカモメが数羽飛ぶ
木々のみどりのあいだ
あおというよりみどりの水面に漂う白い鳥たち
状況に染まらず掉さして白くあれ
しらとりは嬉しからずや

川岸の広場に舞う赤蒼緑の大漁旗十枚
昨夜の盆踊りのあと
真ん中のやぐら
張られたテント
強い日差しのなかひとはいない
たてとよこを違えて吊り下げられひらひらぱたぱた並んで
ひらひらぱたぱた風に吹かれ
いったいいつまで吹かれているのだろう
ひらひらぱたぱた
何年間?
ひらひらぱたぱた
何日間?
ひらひらぱたぱた
何時間?
ひらひらぱたぱた
本日午後三時まで 片付けの時間まで 地区のみなさんご参集願います
ひらひらぱたぱた
赤蒼緑ひらひらぱたぱた

明るく晴れ上がった夏の日
積雲がぽっ と置かれ絹雲がぱっ とちぎられ
正午の静寂が中空を覆っている
家々が木々が川がかもめが大漁旗があり
冷たさのある風がさっ と吹く


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1 コメント

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情景の移り変わり ()
2009-09-24 00:15:30
 写真の本町橋の左側、写真の外側に、以前、高いポプラの木が2本立っていた。強い風で、大きいほうがまず一本、しばらくして残っていた一本も倒れた。
 このパソコンにデータとして残っている2007年1月の写真には、小さいほうの一本がまだ写っている。このgooのブログには、写真がひとつの記事あたり1枚しか掲載できず、コメントにも写真載せられないようなので、近々、mixiの日記には今の様子と並べて載せようと思う。
 このところ、この家の庭からの風景、定点観測風に写真に撮っている。いま、橋の工事中でもあり、人口の風景も結構変わっている。自然の光景も、もちろん、日々違っている。
 この夏の情景は、具体的なこの庭からの光景であり、同時に、地域社会的な光景であり、文学史のなかでの光景でもある。
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