ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

一景島の満開の桜の下で

2009-03-05 21:11:21 | 寓話集まで
一景島公園に桜が咲いた
小雨の降るなか満開の桜
風が一つ吹くと
はらはらはらはらと
女が泣くように花びらが散る
一本の桜が散ると
次の風で斜向かいの桜が散る
その次の風で
さらに向こうの桜が落ちる
はらはらはらはらと花びらが落
ちる
傘をさすかささないかのはざま
で雨を受け花を浴びこどもが走
る遊びまわる
落ちる花落ちる花を追いかけて
こどもが走る遊びまわる
さわさわさわさわと風を受けて
さわさわさわさわと風に追われ
はらはらはらはらと雨を受けて
はらはらはらはらと雨に濡れて
さわさわさわさわと花を追って
さわさわさわさわと花に引かれ
はらはらはらはらと雨が落ちて
はらはらはらはらと花が散って

一景島は昔海だった
入り江に浮かぶ岩だった
岩の上の社だった
あたりは干満で姿をあらわす干
潟だったか砂浜だったか海苔柴
が立ち込めていたはずだが一本
の桜も無かった
海底から生え出す桜などない
桜貝でも桜海老でも桜鱒でも桜
鯛でも人間の桜でもなく染井吉
野か彼岸桜かしだれ桜か山桜か
海底から立ち上がる桜などない

こどもは
走りまわる遊びまわる
花びらを浴びる
細やかな雨を浴びる
風を受ける
はらはらはらはらと
緋縅の鎧もつけず
太刀もはかず
花を見上げる
雨を見上げる
はらはらはらはらと
女が泣くように雨が降る花が散



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1 コメント

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緋縅の直文 ()
2009-05-27 21:42:40
 緋縅の鎧をつけて太刀佩きてみばやとぞ思うふ山桜花
 というのは、気仙沼出身の歌人落合直文の傑作。
 しき嶋のやまとこゝろを人とはゝ朝日ににほふ山さくら花
 というのは本居宣長。
 宣長のあはれに対して、直文のあっぱれ、の対比と私は思うが、どうでしょう?
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