ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

霧笛33号〈編集後記〉

2015-03-09 23:16:58 | 霧笛編集後記

◆そして、冬も終わる。暦年が改まると、あっという間に年度が押し迫る。このところ、時の経つのがいや増して早い。「光陰矢のごとし」という常套表現が成り立つのは、年をとればとるほど時の経つのが加速度を増すからだ。四十代は急に早くなり、五十代になれば同じ速度を保つ、などということがなく、常に加速度を増すばかりであるからこそ、時の経つのは早い、とだれしもが思うのだ。小学校五、六年生で少し早いと思って以来、全ての年齢で、加速度を増してきた。これは、ごく単純な数学の問題であって、分子は常に1であっても、分母が毎年大きくなるということの実感覚上の表れに過ぎない。来年は還暦、申年だ。

◆詩人、翻訳家で絵本作家の石津ちひろさん、三十二号をご覧になって、「私も熊本氏の域に達したい…と感じました。千田さんの今回の詩二編、ドキリとしました。」と。熊本さんの「そういうふうに」、それこそ、ドキリとする詩である。仏教的な諦観、いや諦めの文字よりも明らめという文字がふさわしい。あくまで明晰である。すべてが明晰に見えているに違いない。

◆畠山美由紀(おや、同人の畠山幸さんと読みは同じだ。年齢も近いはず。同じころ、鼎ヶ浦高校にいたかもしれない)の「歌で逢いましょう」が届いた。このタイトルは、もちろん、往年のテレビの歌番組「夢で逢いましょう」を踏まえている。二曲のオリジナルを除いてカバーを集めたアルバム。NHKBSの人気番組「カヴァーズ」(今夜は井上陽水で抱腹絶倒だった。)で披露した「おんな港町」や「かもめはかもめ」などを含む。「圭子の夢は夜ひらく」とか。新境地であることは間違いない。繰り返し聴いている。

◆熊谷育美「プロシード」は、先日、渡辺謙氏がオーナーのKポートにおけるイベントの折、求めてサインを入れてもらった。堤幸彦監督の「悼む人」のテーマとなった「旅路」を含む。気仙沼の教会での「悼む人」試写会、最後の夕焼けのシーンにかぶせて流れてくるこの曲は圧巻だった。「私の祈りが水平線に重なるまで」という歌詞は、今の気仙沼、これからの気仙沼にとって、奇蹟の一行とも言うべき言葉だと思う。なかなかこういう一行は書けるものではない。

◆このアルバム五曲目の「流星」で市民会館のスタンウェイのピアノを弾いている岡本優子は、ボストンのバークリー音楽大学出のジャズ・ピアニスト。ファースト・アルバム「スイート・ホーム」絶賛発売中。勝手に「優子と育美」と呼んでいるのだが、このユニット、不思議にパワーが増幅すると思っている。大きな力の場が生じると。最近、ライブで共演することも多いようだ。

◆Kポートといえば、図書館に、Kポート文庫として図書を寄贈していただいた。渡辺謙氏の呼びかけで、イベントのたび、気仙沼の子どもたちのためにと貯金箱に寄付を募る。その最初の寄贈を図書館にと。謙さんの愛読するジュール・ベルヌの「海底二万里」など。有難いことである。

◆常山の表紙は、小松睦美さん。モダンダンスの踊り手。霧笛の表紙にすでに三度目の登場となる。まだ直接そのステージを観たことはない。     (千田基嗣)


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