ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

大切なものは       

2009-01-06 00:29:28 | 寓話集まで
大切なものは目に見えない
大切なものはダンボールの箱に入れてとっておく
軽やかに跳びはねる小羊
じゃかじゃかとうるさい小猿のシンバル
兵隊熊のドラマー

大切なものは手に触れることができない
大切なものは透明なガラスの覆いをかぶせておく
三本か四本のとげを隠した美しい花を
あれこれと憎まれ口をたたく美しい花を
その美しい鼻をツンと高くして

大切なものは耳にすることができない
どこかとても遠いところ
美しい花の一本咲いた惑星の風にゆれた
その葉のゆらぎ
光合成のあえぎ

大切なものは聴くことができない
あそこでもここでも何も聴こえない
しんとした砂漠のように
冷たい月の光のように
地平線の向こうの駱駝の隊列のように

大切なものは味わうことができない
くちびるの感触も
舌先の濡れぐあいも
前歯の硬さも
甘さも苦さも悲しみも

大切なものは
丁寧に折り込まれた紙の箱に入れて
堅牢な表紙に包まれて
洋紙のうえの黒いシミの形態で
しまい込まれ
時折
夢のように取り出され
きらびやかな光
確かな手触り
滑るような音
怜悧な匂い
それらをゆっくりと噛み砕き呑み込む

大切なものは容易には目に見えない
心をしっかり働かせなくては見ることができない
箱から取り出さなくては
覆いを外さなくては
一歩一歩近づくことなしには
見ることができない

大切なものは・・・


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1 コメント

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これは、星の… ()
2009-01-21 23:24:57
 言わずと知れた星の王子様。読書の喜び。
 写真、よく見ると、月と星(若干距離はあるけど)。肉眼では、もっと大きくはっきり見えるんだけどね。
 少しだけ、これも性的なところ挿入してみた。挿入、というより、性的なニュアンスをほどこした、というか。
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