ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

佐々木中氏による小沢健二氏の誤読?

2020-08-14 15:56:50 | エッセイ
 佐々木中氏は、思想家、作家で、評論、小説とも何冊か読ませてもらい、このブログでも紹介している。京都精華大学人文学部准教授でもある。私にとっては、読むべき著作家のひとり。ツイッターもなさっていて、明確なもの言いで、なかなか好ましいと思っている。1973年8月2日生まれの47歳、東大文学部卒から博士課程修了なさっている。
 以前に、私は、「定本 夜戦と永遠 フーコー・ラカン・ルジャンドル」(河出文庫)を読んで、ツイッターに感想を書いて、こんなふうに引用している。ずいぶんと気に入ったフレーズであった。

「「ダンスをすることが統治であるような統治性というのがあり得ないか考えてみようではないか。実際にアフリカの人々はそうしてきたのだから、と」(下巻294ページ)ルジャンドルが言っていると、佐々木中は言う。」

 小沢健二氏は、ミュージシャン。シンガー・ソングライター。1968年4月14日生まれの52歳、東大文学部卒。私にとっては、最も好きなミュージシャンのひとり。特に4枚目のアルバム『Eclectic』は、傑作だと思う。7曲目の「欲望」から8曲目の「今夜はブギーバック/あの大きな心」への流れは、何とも言えない。詞をよく聞くと甘く濃厚でエロティックで退廃的で耽美的でありつつ、どこまでも心地よくどこかさわやかでもあるような、世界。最近のツイッターのつぶやきは何か深く考えさせられるところがある。
 五野井郁夫さんというひとは良く知らないが、高千穂大学教授、国際基督教大学社会科学研究所研究員とのこと。ツイッターもなさってるようだ。

 さて、佐々木中氏が、7月27日に、小沢健二氏についてツイートなさっていた。

佐々木 中@AtaruSasaki
小沢健二の発言については五野井郁夫氏のパーフェクトなコメントに付け加えるべきことは何もない。テレビで「ボクの家って右翼の大物なんですヨ」とニヤニヤしながら松本人志に話していたむかし、漠然と感じた違和感が本物になった。ただの不思議の国のニポンのオッサンの煮凝り。

 ここで言っている五野井郁夫氏のツイートというのは、下記のもののようである。

Ikuo Gonoï@gonoi
小沢健二、#BlackLivesMatterを「トローリング」と発言。まずはプリンスの2015年もグラミー賞の発言聴けよ。あれのどこがトローリングなんだよ。そして「オール・ライブズ・マター」とかどんだけまずい方向行ってんの。急速に悪い意味で今の日本のおっさんを凝縮したような生き物になっている。

 と、こう読むと、小沢健二がなにか問題発言をしたかのような書き方になっている。
 五野井氏が引いているのは、小沢氏の下記のツイートである。

Ozawa Kenji 小沢健二@iamOzawaKenji
「わざと怒らせる」手法(番組は https://tver.jp/corner/f0054653?fbclid=IwAR1ihArkSvid-3PPngG2YnabdNTxi3BLsaNCs7KX31aysUnPTI2sY41s9RU… )

 ここで、小沢氏が、ブラック・ライブズ・マターを「トローリング」、わざと怒らせる手法だと言っているのは確かであるようだ。
 しかし、全文を読み通してみると、小沢氏の意図を、五野井氏は読み誤っているように読める。私には、そう読める。
 小沢氏は、だから「ブラック・ライブズ・マター」という言い方はダメで、「オール・ライブズ・マター」と語るべきだ、とは全然言っていない。究極の理念としては「オール・ライブズ・マター」と語ることができるような社会にたどり着くべきだとは言っているかもしれないが、むしろ、そう語ることが現在のアメリカ社会で意味してしまう意味を分かりやすく解説し、「ブラック・ライブズ・マター」と語らざるを得ない状況を分かりやすく解説してくれた文章である。しかし、その理路は、多少複雑で、丹念にテキストを辿って行かないとつかめない筋ではあるかもしれない。ひとつも難しいことは書いていないが、見出し中心に飛ばし読みしてしまうと誤解する危険性はあるかもしれない。
 小沢氏は、切り取った引用はしてくれるな、全文を読んでほしいとツイートなさっているので、具体的な引用はしない。下記のリンクを参照してほしい。
 多分、恐らく五野井氏は誤読したのだと思う。佐々木氏も、五野井氏の誤読をそのまま受け取ってしまったのだろうと思う。
 私の価値観から言って、小沢健二氏の文章はなんら問題がないし、むしろ、現代アメリカを理解するうえでたいへんに有用な文章だと思う。五野井郁夫氏が、(さらには佐々木中氏が)、ふだん、小沢健二氏をどう評価しているのか、ということはそれはそれでまた興味深いところではある。

※小沢健二氏のツイート
https://twitter.com/iamOzawaKenji/status/1287245014473379841

https://twitter.com/iamOzawaKenji/status/1287581782993330177

※佐々木中氏の「野戦と永遠」については、ブログ湾に、下巻分を合わせてツイートをまとめて掲載している。
佐々木中「定本 夜戦と永遠 フーコー・ラカン・ルジャンドル 上」河出文庫
https://blog.goo.ne.jp/moto-c/e/b34bc9bd989357912a6b5ff8468d4b94




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