新しい建築が完成すると
それがすぐに見慣れた風景になってしまう
取り壊された以前の構築物は
もはや古い記憶のようにかすんでしまう
そこには
大きなポプラが二本川岸に並んでいた
大きなポプラと
少しだけ丈の低いポプラと二本
ふたつ並んでいた
小さな方の一本は嵐で自然に倒れ
大きな方のもう一本は危険木として
人為的に倒され
もはやひとびとの淡い記憶の向こうにしか残っていない
それからいまはもう
新しい橋が完成し
2本のポプラが立っていた川の土手は
賑やかな往来の真ん中になってしまった
古い橋の撤去は終わり
その両岸の土手が崩され整地されて
まだ作業が終わらないが
橋はもう失われ
もちろん作業用の仮橋もすべて撤去され
いまはひとまわり大きくなった新しい橋が
新しい道路が接続され頻繁に車が往来する新しい橋が
そのものとして鎮座している
昔からその場所にあったかのように
たくさんの車が走っている
大きな二本のポプラの木は
もはや子どもたちの知らない二本の樹木は
おとなの記憶の中にだけ
うっすらと存在している
取り壊された橋
かたわらに細長い歩道専用の橋のあった古い橋は
まだ子どもたちの記憶に残っているはずだが
それもやがて
かすんで行ってしまう
この新しい橋が
あたかも
ずっとむかしからそこにあったかのように
鎮座している
道路も
この橋につながっている
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