ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

古い二本のポプラ (改)

2014-07-13 23:47:35 | 肯定する

新しい建築が完成すると

それがすぐに見慣れた風景になってしまう

取り壊された以前の構築物は

もはや古い記憶のようにかすんでしまう

 

そこには

大きなポプラが二本川岸に並んでいた

大きなポプラと

少しだけ丈の低いポプラと二本

 

ふたつ並んでいた

小さな方の一本は嵐で自然に倒れ

大きな方のもう一本は危険木として

人為的に倒され

もはやひとびとの淡い記憶の向こうにしか残っていない

 

それからいまはもう

新しい橋が完成し

2本のポプラが立っていた川の土手は

賑やかな往来の真ん中になってしまった

 

古い橋の撤去は終わり

その両岸の土手が崩され整地されて

まだ作業が終わらないが

橋はもう失われ

もちろん作業用の仮橋もすべて撤去され

 

いまはひとまわり大きくなった新しい橋が

新しい道路が接続され頻繁に車が往来する新しい橋が

そのものとして鎮座している

昔からその場所にあったかのように

たくさんの車が走っている

 

大きな二本のポプラの木は

もはや子どもたちの知らない二本の樹木は

おとなの記憶の中にだけ

うっすらと存在している

 

取り壊された橋

かたわらに細長い歩道専用の橋のあった古い橋は

まだ子どもたちの記憶に残っているはずだが

それもやがて

かすんで行ってしまう

 

この新しい橋が

あたかも

ずっとむかしからそこにあったかのように

鎮座している

道路も

この橋につながっている


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