Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

知識×経験=知恵 

2020年09月02日 06時00分00秒 | エッセイ
    「ぼぉーん」と、どこぞの寺の鐘の音。
    堰を流れ落ちる、少々せわしい水音に紛れている。
    東を見れば、陽が山の端にわずかに顔をのぞかせ始めた。
    他には、近くを走る都市高速道路のタイヤの擦過音だけ。
    時計はちょうど6時。
    鳥たちは朝の腹ごしらえに川面を盛んにつつき回っている。
    今日もそんな川沿いをゆっくりと歩いていく。

5月末の3度目の膀胱がん、8月には尿管結石と続き、
実質2カ月半で2度の手術は、78歳の身にはさすがに堪えた。
まだ体の芯のところに若干の疲労感が残っている。
コロナウイルスもあり、外にも出ず、1日中家にくすぶってゴロゴロするばかり。
読書がわずかばかりの慰めとなっている。
「このまま朽ち果てていきはしないか」心が縮こまる。

   そんな、哀れとも思える日々を送っていた時、
   ある方からハッパをかけられた。

   「言うまでもありませんが、日本は人口減少の中で
   高齢化が一層進みますね。
   私も75歳、後期高齢者の仲間入りをしました。
   さて、さて、どう生きていきましょうかね。
   何もしなくても生きてはいけましょうがね、
   それでは面白くありません。
   やはり命尽きるまで、面白く生きたいものです。
   僕ら年寄りは『知識×経験=知恵』という強みを持っています。
   これをうまく使えば、なんとか面白く生きられるのじゃありませんかね。
   もちろんパワーはありませんよ。でもパワー不足なんてものは、
   AIなり、ロボットに補完させれば済むことです。
   人生100年時代。まだまだですよ。前向きに生きなくちゃ」

へなへなと日を送る僕を叱りつけたわけではない。
後期高齢者となった自身の生きようを示されたのだが、
僕には何よりの励ましであった。

    自慢できるほどの知恵を持ち合わせているとは思わないが、
    78年生き続けてきた、なにがしかのものはあろう。
    風が心地よい早朝の川沿いに気合を入れ直してみた。

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1 コメント

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Unknown (けいこたん)
2020-09-02 09:35:22
美しい表現と、力強い心持ちとに、少しだけ若輩の私が励まされています。
ブログを読むたびに、静かにハッパをかけられているようです。
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