「ぼぉーん」と、どこぞの寺の鐘の音。
堰を流れ落ちる、少々せわしい水音に紛れている。
東を見れば、陽が山の端にわずかに顔をのぞかせ始めた。
他には、近くを走る都市高速道路のタイヤの擦過音だけ。
時計はちょうど6時。
鳥たちは朝の腹ごしらえに川面を盛んにつつき回っている。
今日もそんな川沿いをゆっくりと歩いていく。
5月末の3度目の膀胱がん、8月には尿管結石と続き、
実質2カ月半で2度の手術は、78歳の身にはさすがに堪えた。
まだ体の芯のところに若干の疲労感が残っている。
コロナウイルスもあり、外にも出ず、1日中家にくすぶってゴロゴロするばかり。
読書がわずかばかりの慰めとなっている。
「このまま朽ち果てていきはしないか」心が縮こまる。
そんな、哀れとも思える日々を送っていた時、
ある方からハッパをかけられた。
「言うまでもありませんが、日本は人口減少の中で
高齢化が一層進みますね。
私も75歳、後期高齢者の仲間入りをしました。
さて、さて、どう生きていきましょうかね。
何もしなくても生きてはいけましょうがね、
それでは面白くありません。
やはり命尽きるまで、面白く生きたいものです。
僕ら年寄りは『知識×経験=知恵』という強みを持っています。
これをうまく使えば、なんとか面白く生きられるのじゃありませんかね。
もちろんパワーはありませんよ。でもパワー不足なんてものは、
AIなり、ロボットに補完させれば済むことです。
人生100年時代。まだまだですよ。前向きに生きなくちゃ」
へなへなと日を送る僕を叱りつけたわけではない。
後期高齢者となった自身の生きようを示されたのだが、
僕には何よりの励ましであった。
自慢できるほどの知恵を持ち合わせているとは思わないが、
78年生き続けてきた、なにがしかのものはあろう。
風が心地よい早朝の川沿いに気合を入れ直してみた。
ブログを読むたびに、静かにハッパをかけられているようです。