30年以上も同じ職場で働く同僚女性がいる。
彼女も60歳を過ぎた。
もともと背が少し丸い、つまり猫背の気味がある。
最近、それが目立つようになってきた。
ある日のことだ。たまたま二人だけになる場面があった。
「ほれ、背中が丸くなっているよ」と背をポンと叩いた。
それは格別問題なかった。
彼女は冗談めかし背中をすっと伸ばし、笑顔を見せた。
だが、僕の次の一言でその場の空気は一変した。
「そんなだと、婆ちゃんになってしまうよ」
これがいけなかった。
彼女の笑顔は瞬時に消え、
険しい表情でこちらを睨みつけたのである。
「それはハラスメントですからね」
「えっ」面喰い、うろたえた。
「そうなの。すまん」苦笑いを浮かべ、
逃げるようにその場を離れた。
昭和17年生まれで、社会人になったのは41年。そんな世代だ。
その昔、職場でのこんな会話はごく普通のことだった。
女性に「婆ちゃん」などと言えば、
「なに言っているんですか。ご自分の頭をごらんなさい。
立派な爺じゃないですか」そう返され、顔を見合わせ笑い合ったものだ。
先輩の中には、女性のお尻をポンと叩く人さえいた。
「まあ、いやらしい」女性は笑うのみで抗議するなんてこともなかった。
考えれば、その女性の笑顔には激しい怒りが
隠されていたのかもしれない。
女性はぐっと我慢していたのかもしれない。
その頃の日本は、間違いなく「男性優位」の世であったはずで、
女性は自分の身を守るために、
そんな男性の横暴に耐えていたのかもしれない。
だが、世界は変わった。
引きずられるように日本も変わった。
「男女差別」は許されず、
ハラスメントは刑罰にさえ問われるようになった。
その変化に戸惑い、対応できずにいる男がまだ一部にいる。
「そんなだと、婆ちゃんになってしまうよ」と言った僕を含めて……。
女性蔑視発言の森喜朗・東京五輪パラ組織委員会会長
がとうとう辞任の意向を固めたようだ。
私が30代半ばで一時再就職して働いていた一流企業の職場では、男性社員が若い独身女性のおっぱいを軽く揉んだりすることがあって驚きました。私は既婚だったからされたことはなかったのでしたが、今から40年ほど前のことでした。女の子たちは笑っていましたが、今だったら大問題になるかもしれませんね。一流企業であっただけに、余計驚きが、大きかったです。
日常茶飯事だったとは言いませんが、そんなことよくありましたね。
今だと本当に一大事です。