【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

自転車専用道/『タイタニックから飛鳥IIへ』

2009-06-02 18:47:23 | Weblog
 川の堤防上などによくありますが、これを高速道路に併設できないでしょうか。「長距離をとにかくひたすら走りたい」というサイクリスト以外には需要がないでしょうが、信号に煩わされず、事故の危険が(きちんと自動車と分離していたら)非常に少ない、という環境は「健康に良い国づくり」に役立ちそうな気がするのですが。それに、大災害などで歩いて避難する道にも使えます(車道は緊急車両用)。

【ただいま読書中】
タイタニックから飛鳥IIへ ──客船からクルーズ船への歴史』竹野弘之 著、 交通研究協会 発行、成山堂書店、2008年、1800円(税別)

 本書で「客船」は輸送が目的の遠洋定期航路の外航客船(または貨客船)で欧米では「オーシャンライナー」と呼ばれる船のことです。対して「クルーズ船」は娯楽が主目的でレジャー産業に携わる特殊な客船です。
 大洋を渡る客船が登場したのは1840年頃からで、あっという間に世界中に定期航路が開設されました。北大西洋で一番のお得意は移民でした。1930年頃からスピード競争が始まり(「ブルー・リボン」という賞がありました)、各国が国威を賭けて新造船を投入します。
 「クルーズ」は19世紀中頃に始まります。はじめは客船をチャーターして(あるいは複数の交通機関を併用して)行われるものでした。地中海クルーズやフィヨルドクルーズが行われています。1884年にはクルーズ専用船「セント・サンニヴァ」が登場します。船室は1等のみで貨物スペースはなし、という斬新なものでした。
 1872年(明治五年)に世界初の「世界一周ツアー」が公募されます。区間毎に汽船や鉄道を乗り継ぐものですが、なんと122日の旅程で、日本にも寄港しています。1914年のパナマ運河開通と第一次世界大戦終結を受けて1922年から「世界一周クルーズ」が始まります。7ヶ月かけて世界一周する洋上大学クルーズ(洋上で取得した単位は学生の所属大学の単位に認定される)なんて変わり種や世界一周定期航路なんてものまで登場しました。禁酒法時代のアメリカではどこにも寄港しない領海外へのワンナイト・クルーズが人気でしたが、その目的は明々白々ですね。
 第二次世界大戦で客船は次々沈められ、生き延びたものが定期航路に復帰したのもつかの間、ジェット機時代の到来で1960年代に客船は次々引退します。さらにオイルショック(燃料費が3倍以上に高騰)が追い打ちをかけます。
 一方、お手軽クルーズの人気が出ます。中古の定期船を改造したクルーズ船が多数登場し、アメリカで人気となりました。1980年代半ばから北米クルーズ市場は成熟し、様々な会社が弱肉強食の争いを繰り広げます。ここのマーケット分析と会社(や人材)の離合集散が、経済の素人でも楽しめるように書いてあります。そこに日本郵船も参入します。

 豪華な客船やクルーズ船の写真も豊富に収載されていて、見るだけでも楽しめます。ただ、あくまで「歴史の本」ですので、個々の船についての詳細はありません。(タイトルにあるタイタニックについても、写真1枚と3行の文章だけです)
 しかし、写真を見ていて邪魔に思うのはでかい煙突です。戦前のようにむき出しという感じではありませんが、やはり目立ちます。原子力船にしたら煙突はなくせるのかな。それで無寄港世界一周クルーズ……って、誰が乗るんだろう?