【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

エコカー減税/『泣き虫しょったんの奇跡』

2009-06-27 17:02:17 | Weblog
 町の自動車ディーラーはどこも「エコカー減税」ののぼりを立てたり看板を出しています。日本中がエコカーの大売り出し状態です。こんなに各メーカーがエコカーをすでに発売しているのだったら、わざわざハイブリッドカーなどを開発する必要はなかったのでは?

【ただいま読書中】
泣き虫しょったんの奇跡 ──サラリーマンから将棋のプロへ』瀬川晶司 著、 講談社、2006年、1500円(税別)

 漫画「ヒカルの碁」では、囲碁の面白さだけではなくて、アマチュアがプロになる道がどのくらい厳しいかも描かれました。それは将棋でも同様です。若いアマチュアは厳しい試験を突破して奨励会員になりますが、そこには「年齢規定」があります。21歳の誕生日までに初段、26歳の誕生日までに四段にならなければ、退会しなければならないのです。
 著者は小学生の時に将棋を覚え、お向かいの子と切磋琢磨することで力を伸ばしました(ちなみにそのお向かいの「健弥くん」は後にアマ竜王になっています)。著者はプロを目指して厳しい戦いを続け、ついに三段になります。この三段リーグを突破すれば、念願の「プロ棋士」ですが、それが許されるのは半年に二人だけ。著者はいいところまで行くのですが結局「幸運の女神の前髪」をつかめず、ついにそのまま26歳になってしまいます。著者は「頑張るべきときに、頑張らなかった」と自分を責めます。
 26歳高卒職歴無しで社会に放り出され、著者はまず夜間大学に通いそして就職します。そこは将棋部が強く、著者はやがて一度捨てたはずの将棋の駒を手に取ります。いろいろな雑音抜きで、自分の指したい将棋を指すために。やがて著者は実力を発揮し始め、トップアマがプロに勝てる確率は2割と言われているのに、プロアマ戦でプロ相手に7割以上の勝率を誇ることになってしまいます。
 小学生のとき、それまでの内気を捨てて「ぼく、将棋が指したい」と級友の前で宣言したのと同様、著者は世間に向かって宣言します。「自分はプロになりたい」と。
 それは、個人の願いの充足のためだけではなくて、遅咲きで現在の奨励会規定ではプロへの道を閉ざされている他のアマチュア棋士のための運動でもありました。当然大騒ぎとなります。「奨励会を首になった人間が何を戯言を言っている」「秩序を乱す」という頭から否定や誹謗中傷もあれば、「権威への挑戦」というちょっとずれた支持論もあります。さらに、衰退傾向にある将棋界を改革する良いチャンス、と捉える人もいました。様々思惑が交錯しますが、ついに著者は「資格試験」を受けられることになります。「プロ6人相手に3勝以上」がその条件です。プレッシャーに弱いタイプらしい著者は初戦を落とし、そして……

 「願えば、夢は叶う」と言います。でも、願うだけでは夢は叶いません。その夢を持ち続けること、あきらめないこと、努力を続けること、あきらめないこと、夢を広言し支持者を得ること、そして、夢を手にした後その夢を現実にするためのつらさに耐えること、耐え続けること、あきらめないこと、それらが必要なことを本書は教えてくれます。
 そうそう、著者の人生を変えた教師は「ほめて育てる」主義でした。ただ、ことばで上っ面だけほめるのではなくて、本気で相手を信じること、そしてその人の「可能性」を育てること、そういった「ほめ方」をするには、ほめる側にも相当の強さが必要です。著者にしてもこの教師にしても、どうやったらその強さ(勇気)を維持できるのか、私は呆然と空を仰ぎます。