「アメリカン・ショートヘア」だともちろん猫ですが、ただの「ショートヘア」だと女性のヘアスタイルを私は想像します。ところで女性の「ショートヘア」は男性の短髪よりもはるかに長いですよね。なぜだろう。
ところで、日本で、「男のロン毛」はあっても「男のショートヘア」とは言わない(少なくとも私の周辺で言っているのを聞いたことがない)のは、なぜなんでしょう?
【ただいま読書中】『天地明察(上)』冲方丁 著、 角川書店(角川文庫)、2012年、552円(税別)
碁をもって徳川家に仕える碁打ち衆の一人、二代目安井算哲は“微妙な”立場でした。産まれるのが遅かったため、すでに20歳年長の養子が義兄として広く活動していました。そのため算哲は、名前を「安井」だけではなくて「保井」と名乗ったり「渋川春海」と名乗ってみたり、頭も丸めず、囲碁以外にも算術や測量・天体観測にも打ちこんでいました。算術に関しては、刀は忘れても算盤は手元から離さない有様です。それを「碁に集中せずにあたら有能な才を無駄にしている」と見る人もいました。
戦国の世は終わり、「泰平の世」しか知らない人が増えています。振袖火事で江戸は焼き払われ、天守閣も焼失しました。しかし幕府は天守を再建しませんでした。「時代」は変わったのです。資金は、天守閣ではなくて、江戸の町再建と玉川上水の建築に回されました。この時代、フランスでは“太陽王”ルイ14世がヴェルサイユ宮殿の建設を始め、清国では“史上第一の名君”康煕帝が紫禁城を豪華に増改築させていました。
日本のあちこちで、高級な趣味として算術が盛んに行われていました。江戸もその拠点の一つです。神社の「算額(問題を公表して、それに解答を自由につけさせる絵馬)」が有名ですが、算術の塾もありそこでも出題と解答のバトルが行われ、「明察(正答)」や「誤謬」のことばが飛び交っていました。算術にも強い興味を持つ渋川晴海は、同年齢の関孝和の存在を知り、その天才ぶりに衝撃を受けます。その衝撃で、晴海の「モラトリアム」は終わります。さらに酒井老中からは「使命」が与えられます。まずは北極星の観測。日本各地の「緯度」の確定です。こうして安井算哲ではなくて渋川晴海の全身全霊をかけての「勝負(立問とその解答)」が始まりました。
日本を広く歩く回って天体観測をする旅で、晴海の“視野”は広げられます。「暦」が「権威」であることも理解します。さらに、現在使われている「宣命暦」に「ずれ」が生じていることも知ります。
明るくポップな文体の“時代小説”です。不思議なのは、様々なタイプの人物が次々登場するのに、どの人にも“魅力”があることでしょう。どの人も何らかの「問題」に出会い(他から与えられ、あるいは自分で自分に出し)、解答を試みて「明察」や「誤謬」に直面し、そこからまた別の「問題」に立ち向かっています。その明るい真剣さに、どの人のことも私は好きになっていきます。なんだかちょっと珍しいタイプの小説です。これが現代小説だったら嘘くさいと思うのかもしれませんが、「時代小説」の枠組み(と制限)を著者は本当に上手に使っています。