【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

八億円と800万円

2020-05-18 06:45:36 | Weblog

 「妊婦向けマスク検品、8億円→800万円 厚労省が修正」(朝日新聞)
 「8億円じゃありません。たった800万円です」だそうです。
 厚生労働省にとっては「800万円なんかはした金」なのかもしれませんが、私はそうは思いません(本当にはした金なのだったら、私にください)。というか、47万枚のマスクの内4万7千枚が不良品だった、という時点でこのプロジェクトは“アウト”では? さらに妊婦向けはアベノマスク全体の1%以下、ということは、ぐちゃぐちゃ言い訳をしているけれど、結局最終的に8億円はかかるということですよね? 厚生労働省にとって8億円ははした金? だったら私に下さい。待ってます。

【ただいま読書中】『百億の昼と千億の夜』光瀨龍 著、 早川書房(ハヤカワ文庫JA6)、1973年(2008年37刷)、780円(税別)

 まずは宇宙の起源について、悠々と著者は説き始めます。仏教では長大な時間の流れについて「劫」を様々なたとえで表現しますが、それを聞いているような気分がしてきます。そして星が生まれ、生命が誕生。カンブリア紀から古生代にかけて「大事件」が起きます。海を支配していた三葉虫が魚に負けて絶滅したのです。
 漫画版の『百億の昼と千億の夜』には、「コミカルさ」も散りばめられていましたが、小説版はひたすら沈鬱重厚です。「神とは人にとっていかなる存在か」という重いテーマを、主人公を変えながら追究し続けます。ここで重要なのは、テーマが「神とはいかなる存在か」ではなくて「人にとっていかなる存在か」である点です。その「正体」よりも、「自分」が神をどう信じるか、の精神的態度の方が重要、と言われると、ものすごく冒瀆的な響きをことばがまとってしまいますが、しかし、信仰というのは本来“そういうもの”であるはず。
 もしかしたら、仏教ではこの世は「苦」で救い(苦からの解脱)はあの世にあり、キリスト教でも救済は天国にある、という「現世否定」が共通していることへの不思議さに著者が気づいたことが本書が生まれるきっかけだったのかもしれません。あるいは、熱力学の第一法則は「エネルギーは互換可能」つまりこの世は変化はしても存在は続く、と主張しているように見えるのに、第二法則ではこの世は滅びてしまう、と主張しているように見える、この矛盾をなんとか説明しようとしたのがきっかけかな?
 なんだかそういった脇道に自分の思考がどんどん逸れていくのも、楽しいものでした。