【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

稼げる政治家

2020-07-10 08:39:33 | Weblog

 「金を稼げない文化はつぶす」と橋下大阪府知事が文楽や図書館を冷遇する発表をしたとき、私は「日本文化や人類の未来に対する志が低い政治家だ」とあきれましたが、百歩譲って「金を稼げないこと=悪」が正しいのだとしたら、橋下さんは自分自身のことを「稼げる政治家だから“善”」だと肯定的に思っている(だからこそ“悪”を責めたくなる)のだろうな、ということに思い至りました。しかし昭和の時代の政治家の理想像は「清貧」「井戸塀」です(どちらも現在の政界では死語でしょうけれど)。それに対して橋下さんは「稼げる政治家」が善。一体どうやって「政治家」としてせっせと金を稼いでいたのか、ちょっとその手法を聞いてみたい気がします(もしも「政治家としては稼いでいない」のだったら、「稼がない政治家」は肯定するのに「稼がない文楽」は否定する、ということになってしまいます)。

【ただいま読書中】『博物館が壊される! ──博物館再生への道』青木豊・辻秀人・菅根幸弘 編著、 雄山閣、2019年、3000円(税別)

 1949年金閣寺の炎上は、文化的にも社会的にも衝撃的な“事件”でした。これを受けて50年には「文化財保護法」が制定され、重要文化財を毀損する可能性がある「水火の管理」は厳重となりました。ところがこれが気にくわないのが「文化財で金を稼ぎたい人」。たとえば2017年山本幸三地方創生担当大臣は「重要文化財に水火を持ち込むことを妨害している一番の『がん』は文化学芸員だ」と暴言を吐きました。さらには「二条城には英語表記の案内板がない」「大英博物館では改装に反対した学芸員を全員くびにした」とファクトチェックをしたら即座に「嘘」とわかることも同時に言っていますが、嘘をついてまで、人を「がん」呼ばわりまでして、金を稼ぎたい、というのは、人品の点で文化を担当するには問題がある、と私には思えます。
 明治時代、日本人は大量の文化財を海外にたたき売りました。それで「金儲け」はできたわけですが、そのことを後の世に日本人がどのくらい悔やんだか、わかっている人はわかっています。わかっていない人はわかっていないのですが。
 ここで、「儲からない博物館」を敵視する人たちがいるように、「儲からない病院」を敵視する人たちがいることを私は思い出しました。昨年の今頃でしたっけ、「儲からない病院は整理だ」というリストが厚生労働省によって発表されました。コロナ禍によってその動きは現在一時停止中のようですが、厚労省が人為的に潰さなくても、現在のコロナ禍の影響で赤字の病院が順調に増えているそうですから、もう少ししたら「病院倒産」が見出しの記事が次々登場することになるでしょう。病院の場合には、あちこちで病院が潰れたら、喜ぶ人(代表は厚労省)もいれば悲しむ人(その地域の人)もいてわかりやすいのですが、博物館が次々潰れたら、現在の日本で悲しむ人はどのくらいいるのかな。ちょっと不安です。