私がすぐに思いつくのは「菊の花」。食べるではなくて飲むになりますが、桜の花(桜茶)。そういえば「無花果」は花を食べていることになるんでしたっけ? ちなみに、「野菜として一番食べられている『花』」は、ブロッコリー・カリフラワー・芽キャベツだそうです。しかし、あれで花束を作りたいかな?(クイズのネタとしては面白そうですが)
【ただいま読書中】『食用花の歴史』コンスタンス・L・カーカー/メアリー・ニューマン 著、 佐々木紀子 訳、 原書房、2019年、2200円(税別)
人類は古くから花を食べていました。旧訳聖書にはタンポポやサフランが登場します。古代エジプト「エーベルス・パピルス」にもサフランやハスの花が薬や食材として登場します。古代ギリシアや古代ローマではもっと様々な花を食べました。「カエルの脚のフライ」では付け合わせはフェンネルの花です。古代中国では、食用花として甘草や菊、ハスがあり、薔薇酒も古代から現代まで人気があります。北ベトナムのスン・ジン族は数百年前から地域の花などで染めた米料理「ソイ・バイ・マウ(七色のおこわ)」を食べています。古代インドでは「アーユル・ヴェーダ」の治療の一部として食用花が扱われています。アメリカ先住民は花の香りを愛し、食べてもいました。
中世ヨーロッパの修道院には薬草園がありましたが、そこでは「花」も薬草やスパイスなどとして育てられていました。15世紀のイングランドでは、ハーブや花を入れたミックスサラダが日常的に食べられていました。唐・モンゴル帝国・ムガール帝国のレシピにも食用花があります。
ヴィクトリア朝のイギリスでは「花柄」が人気でした。布地や食器、食卓の飾り、花言葉、そして花で飾ったペストリーやサラダ、砂糖漬けの花。「美」というものを重視した時代のようです。
20世紀〜21世紀には、「自然食」のシンボルとして食用花は扱われることがありました。そして分子ガストロノミーでも花は重要な要素となっているそうです。
バブルの頃だったかな、日本でも「食用花」がちょっとしたブームになって、花びらをまぶしたサラダなんてものが供されたりしていました。私もちょっと食べたことがありますが、そこまで美味いとは思いませんでしたっけ。ただ、戦争中のオランダで飢餓のためにチューリップの球根まで食べた人がいることを思うと、文句を言ってはいけないのでしょうね。