俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

修復

2015-12-02 09:39:25 | Weblog
 機械には自己修復機能が備わっていない。だから故障をしたら修理をせねばならない。昔のラジオやテレビなら叩いた拍子に直ることがあったが、現代の複雑な機械を叩いても故障箇所が増えるだけだろう。だから修理が不可欠だ。ところが動物には自然治癒力が備わっている。軽い怪我や病気であれば治療などしなくても勝手に治る。
 これまでは自然治癒力が軽視され医療が過大評価されていた。例えば傷には消毒という治療が必要と思われていた。ところが消毒が実は有害であり却って傷を悪化させることが明らかになり、今では水洗いが奨励されている。消毒という間違った治療をしても自然治癒力が治してしまうから、それが間違いであることが気付かれなかった。
 コンピュータが勝手に更新作業を始めることがある。「Windowsの準備をしています コンピュータの電源を切らないでください」と表示される。この画面のまま延々と待たされていれば我慢できずに電源を切りかねない。
 自然治癒力が働いている時の人間の体はこの状態に似ている。不快感が病気の症状なのか自然治癒力の発動に伴う一時的な不快なのか区別できない。我慢が嫌いな人や無知な人は対症療法薬を使って自然治癒力の妨害をしてしまう。
 症状と思われていることの大半が実は自然治癒力の発動だ。発熱は、熱に弱い病原体に対する攻撃であり、下痢や嘔吐は有害物を体外に排出するための積極的な対応だ。これは未だ定説ではないが、腫れも自然治癒力の発動だと思っている。腫れることによって血流が増えて患部が治癒される。腫れを防ぐために行われているアイシングは、試合中のボクサーの顔面以外には使わないほうが良いと思う。腫れれば治癒が促される。
 パソコンの自動更新において「○%完了」と刻一刻表示されれば安心して待つことができる。人体の修復ではこんな機能が無い。だからついつい対症療法薬に頼り勝ちだが、対症療法薬は治療薬ではない。もっと自然治癒力を信じるべきであって、自然治癒力で治せない時に初めて治療を行うべきだろう。自然治癒力の手に負えない病気や怪我であれば人為が必要になる。
 歯には自然治癒力が働かない。動物に虫歯は殆んど無いから歯を自然治癒する能力など必要無い。人類だけが虫歯に苦しむ。これは農業を始めて以来、炭水化物偏重という奇妙な食生活を始めたことが原因だろう。原因はともかく、歯には自然治癒力が働かないという現実があるのだから、歯だけは人為的に治療をしなければ治らない。痛みを我慢していても悪化する一方だ。

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