俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

相対的貧困率

2015-02-24 09:41:45 | Weblog
 2012年の日本の相対的貧困率は16.1%でOECD加盟国ではアメリカに次いで2番目に高かったそうだ。随分実感と違うとは思っていたが、思わぬところでこの統計のトリックに気付かされた。韓国紙の中央日報日本語版は21日にこんな記事を掲載した。
 「韓国はOECD加盟国のうち2番目に低賃金労働者の比率が高いことが分かった。(中略)中位賃金の3分の2未満を受ける低賃金労働者の比率は25.1%と把握された。これはOECD平均の16.3%を大きく上回り、米国(25.3%)の次に高い。(中略)日本は14.3%」
 この記事に基づくなら日本は格差社会ではなく世界有数の平等社会だ。最初は誤報かと思った。相対的貧困率は中位の半分以下の所得しか無い人の割合でこれが16.1%と報じられているのに、中位の2/3未満が14.3%しか占めないということはあり得ない話だ。
 また統計のマジックに騙されていたことに気付いた。韓国のデータは労働者の賃金を比較しており、日本で広く喧伝されているデータは全世帯での比較だ。全世帯だから私のような年金生活者や子供や専業主婦まで含めて世帯収入を家族数で割った数値だ。ワーキングプアを問題にするなら韓国のように労働者だけを対象にすべきだろう。
 日本の相対的貧困率が高いのはワーキングプアが原因ではなく働いていない人が多いからだ。つまり高齢者が多いことが原因だ。しかし多くの高齢者はフローが少なくてもストックがある。だから決して貧困を意味しない。
 先日も「中流」で騙されかけた。格差社会を問題視する記事だったが、その根拠とした内閣府による昨年の調査結果を見れば、自分を中流と考える人が93.1%を占め、下流と考える人は僅か4.6%だ。これなら充分「一億総中流社会」と言える。格差だ、貧困だ、と騒ぎ立てる人はデータを勝手に解釈しているだけだ。これではシングルマザーのような本当に困っている人が見えなくなる。
 昨年の11月に安倍首相は「エネルギー価格の高止まり」という明らかに間違った発言をしたし、民主党の岡田代表は16日の代表質問で「格差拡大」を連発した。主張は事実に基づかねばならない。結論を正当化するために都合の良いデータを拾い集めるのは朝日新聞だけの手口ではないようだ。
 マスコミ、政治、医療といった職に就いて理性的であるべき人が正しい根拠に基づいて合理的な判断をしようとしないのは全く困ったことだ。日本人は論理学を必須課題に位置付けて国民全員が基礎から学び直す必要があるようにも思える。

コメントを投稿