俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

円高のデメリット

2010-01-26 16:23:52 | Weblog
 円高によって不利益を蒙るのは輸出企業だけではない。日本の雇用そのものも悪くなる。それは国内生産が海外生産に切り替えられるという形での雇用の減少だけでは済まない。
 仮にある企業がアメリカに支社を持っていて社員の月給が日米とも40万円だったとする。1ドル120円なら3,333ドルだ。それが円高で1ドル90円になれば40万円は4,444ドルになるが、勿論アメリカの支社はこんな賃上げは絶対にしない。月給3,333ドルに据え置く。つまり円換算では30万円の負担で済む。円高でアメリカ支社の人件費は25%も安くなるのだから、日本のオフィスを縮小してアメリカのオフィスを拡大することによって収支の改善を図ることになるだろう。
 このことは単に支店や営業所で起こることではない。研究開発部門や管理部門でも起こり得る。日本にある研究所を閉鎖してアメリカに研究所を移すなら、問題は雇用だけに留まらず、企業の根幹とも言える技術開発力までアメリカに移転されてしまう。
 外資系企業でも同様だ。日米の月給がともに3,000ドルだったとする。1ドル120円なら36万円だ。これが1ドル90円になれば日本法人での月給36万円を維持するためには4,000ドルが必要になる。日本法人の人件費は33.3%膨らむことになるから日本法人は規模を大幅に縮小されざるを得なくなる。
 この問題は海外に事業所を持つ大企業だけのことではない。今でも多くの企業はコールセンターを沖縄に設けている。沖縄の人件費が日本で一番安いからだ。このまま円高が進めば沖縄のコールセンターを韓国・中国・台湾などに移すということもあり得る。円高は思わぬ形での雇用の空洞化を招く。

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