俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

老化

2009-10-20 18:41:58 | Weblog
 歳をとると老化と総称される様々な障害が現れる。これは機械の部品の磨耗や金属疲労による劣化とは違って細胞の複製ミスによるものだろう。
 コピーした紙を次々とコピーするとだんだん不鮮明になる。そうならないように多くの人はオリジナルを「原紙」として保管して原紙からコピーを取る。こうすることによってコピーにコピーを重ねることによる劣化を防ぐ。
 生物の体には原紙が無い。DNAそのものが再生されるからどんどん最初とは違った細胞になってしまう。これが老化のメカニズムだろう。
 これは伝言ゲームにも似ている。伝わっているうちに少しずつ違ったものになり最後には似ても似つかぬ文章になってしまう。細胞のコピーミスの最たるものは癌細胞だろう。
 ところで遺伝子も親子で受け継がれるものだ。もし単純に遺伝子の再生産を繰り返せばどんどん劣化することになる。これを防ぐ仕組みが有性生殖と適者生存だろう。
 個々の個体は劣化するだけではなく様々な変異を持つ。変異は本来はコピーミスだが望ましい変異を持つ個体が子孫を残すことによって種族としての劣化を防ぎ、進化も促す。本来、欠陥となる筈のコピーミスが選択を通じて進化へと繋がる。
 生物は種族全体としては適者生存によって劣化を防いでいるが、個体には優れた細胞を選択できるような仕組みが無いので劣化(老化)は免れ得ない。これは個体の宿命だろう。

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