俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

加工貿易

2015-10-07 09:40:42 | Weblog
 資源に恵まれない日本が経済大国であるのは加工貿易の恩恵だ。自動車であれ家電であれ時計であれ、原料を輸入してそれに付加価値を付けて輸出している。加工貿易は日本のお家芸とさえ言える。輸入に頼らない輸出品は漫画とアニメぐらいしか無いのではなかろうか。
 TPPが概ね合意に達したようだが、もっと早く日本が食品の門戸を開いていれば加工食品の輸出大国になっていただろう。農業を守るという口実で省益を追及した農林水産省の罪は重い。国賊の名に値するほどだ。
 世界一大量に小麦を輸入する国をご存知だろうか。イタリアだ。イタリアは輸入した小麦をパスタに加工して輸出している。食品の加工貿易の手本だ。
 僅か10%の自給率しか無い小麦を守るという口実での異常な関税が日本に無ければ日本はイタリア以上のパスタ大国になっていただろう。異常に高い小麦を使ってインスタントラーメンを作っても異常に高いラーメンにしかならないから日本のメーカーは海外生産をせざるを得なかった。これは国内での雇用機会を奪った。もし小麦の価格がまともであれば、インスタントラーメンを国内で生産してそれを世界中に輸出することによって、小麦農家の何万倍の雇用を生み大量の外貨を獲得して国を富ませていただろう。
 ビールも同じだ。資源に恵まれない日本だが水資源には恵まれている。水道水をガブ飲みできる国など殆んど無い。これほど水に恵まれていれば飲料の製造において絶対的に有利だ。もし大麦に異常に高い関税が掛けられていなければ日本は世界有数のビール輸出国になっていただろう。少なくとも韓国から低品質のビール紛い品を輸入することなど無かっただろう。
 農家を守るために必要な措置だ、と農水省は言う。これは嘘だ。確かに当初は農業保護が目的とされていたが今では、品不足が続くバターも含めて、農水省の利権を守るための悪政に過ぎない。おかしな過剰保護が無ければ農家は市場に受け入れられる農作物を作るなり転職するなりして自立する。農水省が国民に高額の食料品を押し付けるという暴挙を行ってまで特定の農産物を保護したのは利権のためだ。これは国営のぼったくりバーのようなものだ。
 かつては人口の5割を占めた農業人口は今では5%にも満たず、しかも大半が兼業あるいは退職後農家だ。最早水田は票田ではない。
 旧・通商産業省(現・経済産業省)も悪政を行った。大規模小売店舗法などによって零細小売業者を保護したが、それが招いたのは日本全国に見られるシャッター商店街だ。おかしな保護政策は事業者の甘えを呼んで保護行政の元でしか生き延びられない虚弱者を短期間温存するだけであり、事業の進化を妨害する。

コメントを投稿