俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

日本の農業

2014-08-17 09:41:09 | Weblog
 マスコミの報道姿勢の影響もあり、日本では遺伝子組み換え農作物は不評だ。何となく危険だと思っている。昔、バイオ技術が持て囃されたのとは全く逆の状況だ。これが日本の農業の危機を招くのではないかと私は秘かに心配している。
 遺伝子組み換え技術によって病虫害に強い品種も作られている。これを栽培することによる最大のメリットは、農薬の使用を減らせることだ。これは単にコストの削減になるだけではない。土壌の汚染を防ぐことになる。更には川や湖の環境を守ることにも繋がる。環境汚染を心配する人々がなぜこの点を高く評価しないのか不思議でならない。フードマイレージとかバーチャルウォーターのようなまやかしの指標よりも農薬使用の削減のほうが確実に有効だろう。
 世界が遺伝子組み換え農作物によって収穫量を増やしているのに、頑固に昔ながらの作物に拘れば国際競争で敗れるということにもなりかねない。機械化が進んでいる時に手作業を改めようとしないようなものだ。
 安全性に疑問を持つ人は少なくない。しかし遺伝子組み換え農作物は既に大量に生産され大量に消費されている。この実績を考えれば危険性は殆んど無いように思える。
 新薬は危険だ。販売が承認された後で副作用が見つかって大規模な薬害を招いたサリドマイド事件のような例は沢山ある。しかし遺伝子組み換え農作物の場合、実験数が新薬とは2桁も3桁も違う。例えば遺伝子組み換えトウモロコシは牛や豚の飼料として日本でも大量に消費されている。あるいは既に遺伝子組み換え農作物が大量に流通しているアメリカで、これによる健康被害は発生していない。
 逆説的な言い方だが、遺伝子組み換え農作物のほうが却って安全なのではないだろうか。遺伝子組み換え技術を使った新品種は厳重に安全テストが行われる。その一方で既存種は現状のままで流通している。一部の人がアレルギー反応を起こす小麦やソバであれ、犬や猫などには有害なタマネギであれ、既存の危険な食材は放置されている。遺伝子組み換え技術を使えば、アレルギーを起こさない小麦や犬・猫にも安全なタマネギを開発することも可能だろう。
 新しい商品であれば欠陥があるかも知れない。画期的な新商品が思わぬトラブルを招くこともある。しかし高品質な新商品が安全と分かれば積極的に導入すべきだろう。いつまでも遺伝子組み換え農作物に偏見を持っていれば、そのことによって日本の農業がガラパゴス化して世界の農業の進歩から取り残されるかも知れないと私は危惧する。

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