七曜工房みかん島

18年間の大三島暮らしに区切りをつけ、
滋賀大津湖西で、新たに木のクラフトと笛の工房
七曜工房を楽しみます

一人で建てる木組の家~⑩建前その②続き:柱・梁・桁

2007年09月13日 | 『一人で建てる木組みの家』
5 カケヤ打ちは気持ちいい

軒桁をのせる

滑車で吊り上げた梁を,柱の上枘へ落とす時、
上枘は2重枘になっていて
上の方は3cm角と細い棒状であるため、とても心細い。
梁が横へゆれてコツンと当たればポキリと折れそうである。
注意深く少しずつロープをゆるめて梁を降ろしてくる。
ここで言っておかなければならないが、
一人で建てる家ではあるが、
この時も妻の助力を求めてしまった。
吊り上げる時は、自分で吊り上げるのだが、
次には吊り上げた梁を、
枘と枘穴が合うように誘導してやらねばならない。
それから少ずつ降ろすのだが、
この時に降ろす人が居るととても助かるのだ。
吊り上げには相当の力が必要だが、
降ろす時には、
ロープを土台に巻きつけて、ブレーキをかけながら降ろすので、
力は要らない。女の力で充分である。
枘と枘穴を合わせるのに、梁をのせる時は、それ程苦労はいらない。
手で柱を動かしてやれば充分に自由に動いてくれる。
だが、梁をのせて、その上に桁をのせる時には、
梁で柱が固定されているので、自由には動いてくれないので
枘と枘穴が合わず落とし込めない。
こんな時には、カケヤで叩いても無理なので、ロープを使う。
引き寄せたい柱同志にロープをかけ渡して
その間に棒杭を差し込んでロープをねじってやる。
ロープが引きちぎれるかと思う程ねじれてきたら、
柱が1mm2mmと寄ってくる。
思う位置に来たら、桁を落とし込んでやる。


ロープでのねじり寄せ


ロープでのねじり寄せ2


通し枘の楔止めと渡り顎

梁や桁自身の重さで、3分の2ぐらいまでは枘に入り込む。
それ以上は、カケヤで叩き込む。
少しずつ少しずつ、入っていくのがわかる。
これでガッチリガッチリ決まっていくのだと思うと、
とても気持ちいい。
苦労して刻みをした甲斐があった。
カケヤは、大と中を借りていた。
扱い易いので最初は中を使っていたが、
途中から大の方が力がよく伝わるようで、
重いけれど打ち込み易いので
大を使う。
梁の天端にカケヤのへこみ傷を付けないために、
当て板をしてカケヤで叩くが、
真直ぐにふりおろさないと、当て板がバウンドする。
ヘタをすると、当て板が大きくはねて、下へ落ちてしまう。
仕方なく拾い上げに下へ降りて、また梁の上へあがるということになる


脚立の上でのカケヤ打ち 腰が引け気味

6 高いところは コワイ
梁をかける段階では脚立の上での作業だが、
桁をかける時にはかけ渡した梁の上に
のることもあった。
と言っても、コワゴワまたいで座るだけである。
地上からは3メートル程の高さだが、慣れぬ身にはとても高く感じる。
元々高い所は苦手だ。
かつて友人に、
「テレビアンテナを2階の屋根に取り付けるから、手伝って欲しい」
と言われ、断れずに屋根に上がったものの、
コワくて何もできないで、昼食だけご馳走になって帰ったことがある。
梁の上だけでも、このザマだから、これからどうなるか。
若い大工が梁の上にのって、威勢よくカケヤを振り上げているのをよく見るが、
とてもそんなマネはできない。
幅12㎝の梁にまたがって、力が入りにくいなと思いながら、
コワゴワカケヤを使うだけである。
それども、ダイナミックに建前をしているという気持ちで大満足である。


渡り顎を組むカケヤ打ち

7 組み立てるとデカイぞ
柱、梁、桁と組み上がってくると、思ったよりも大きい家だ。
4間×5間の20坪の家だが、
骨組の立体が出来上がるとそのボリュームは大したものだ。
積んであったこれらの材の量に比べれば、
組み上がった骨組立体はデカイデカイ。
家具作りでもそうだ。
特に箱物は、加工して置いている材からは、
思いもよらない大きなモノが出来上がってくる。
「基礎を見た時は、小屋でもできるのかと思っていたら、
大そうな家ができてきたね」
と言う人もいた。
こうして一挙に建物が建ち上がってくると、
やはり目立つらしく、近所の人達が声を掛けてくれる。
今時、三又と滑車で吊り上げることなどしないから、
とても珍しいらしく、
少し離れてたところに車を止めてこちらを眺めている人もいる。

8 三又のパズル
三又を使って梁をかけて、次へ移る時、
梁方向へ動くならそのまま三又を歩かせてやれば、
次にかける梁のところへ行くことができる。
しかし、
い通りからほ通りというように、隣の通りに移る時はそうはいかない。
三又をばらす必要がある。
三又の脚を開いて、背を低くしてから、脚立に登り、
滑車をはずして持っておりる。
もう一度脚立に登って、今度は三又の脚1本のロープをはずす。
三本の丸太をまとめて持ち運べないので、2本と1本に分けるのだ。
そしてそれらを隣の通りへ運ぶ。
この時、この6mの長い丸太を、組み上がった柱や貫や梁の間をかいくぐらせねばならない。
大きな立体パズルである。おまけに丸太は重い。
頭と体を使うゲームである。
無理矢理こじると柱に傷がつく。優しく大胆に丸太を抜く。
うまく抜けたら次の通りに三又を組立てる。
脚立に登り、三本の頭を縛ってから、滑車を吊るす。
そして材木置き場から梁材を運んできて吊り上げる。
これを何度も繰り返す。
柱と梁だけで5日かかった。
5日とも夕方になれば、クタクタに疲れていた。

9 雨
建前4日目の途中で雨に降られた。
一般的には建前は雨に会わぬように、日を選んで2~3日で棟上げするようだが、一人で建てるとなると早くできないので、途中の雨は覚悟はしていた。
ただ、材木が雨に打たれるとよくないのは解かっているので気にはしていたが、建前の途中ではどうしようもない。横積みをして染み込んだ雨がカビを呼ぶのとちがい、建った材木は乾くのも早いだろうと自分に言い聞かせてそのまま雨打たせ。材木入荷してからここまで7ヶ月。加工済材も未加工材も屋外にブルーシートをかけて積んだきたので、雨に何回も打たれている。安物のブルーシートはすぐに劣化して雨が染みとおるようになったので、材は相当湿ってしまった。そのせいで、黒いカビが出ているのもあった。がなんとか我慢できる程度だった。
しかし建前中の雨を甘く見たの大失敗だった。
と言うのは、材木が汚れるのはカビの色素の沈着よりも、鉄錆との反応の汚れの方がひどかった。釘を1本も使わない骨組である筈なのに。なぜ鉄が
仮筋違いに打ち付けた釘が良くなかった。何度かの雨で黒いアクが柱にこびりついてしまった。野地板をかけてからは、全体をシートで覆ったが、遅かった。建前途中と言えど、手を打つべきであった。
柱の汚れ取りは検討課題として残っている。


桁行完了 2006年4月25日


桁行完了 
手前は筍を煮ているところ カモミールも咲いている

付記 妻・ひろより
 三又と滑車で、1本の柱から立て始めた、大昔風建前当初より、
 柱が立ち並び、骨組が出来てからのほうが、
 夫は ノロノロ いや コツコツと 地味な行動を続けていた。
 夫は、三又を一又で使うことを 元船乗りのAさんに教えてもらい
 「そうや、三又で使う必要はないんや」と恐ろしく、感動し、
 家作りを 「大きな立体パズル」 と評し、イヤに満足気だった。
三又や滑車を組み立てたり、解体したり、
 それをロープで柱にくくったり、解いたり・・
 1日で多人数でする建前とは、大違いの様子であった。
 それでも、少しづつ、確実に、建前は進んでいった。
 私はいつも、
 蟻が、小さな体で、自分よりはるかに大きくて重そうな虫を
 少しづつ、少しづつ運んでいる姿を見つけては
 「わあ~凄い!どこまで運ばはるんやろ」
 と感動して、尊敬しているけれど・・・
 ホント、蟻のように立派な、夫 である。


 「一人で建てる木組みの家」のこれまでは、
  こちらをごらんください
 カテゴリー『一人で建てる木組みの家』からでも、見れます。
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