1 一番難しかった風呂場
昔から、風呂に入ってくつろぐという習慣はない。
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体を洗って、湯舟にさっと入ればそれで良い。
冬なら少しは暖まることもするが、夏ならシャワーだけで良い。
カラスの行水というものだ。入ったあとのサッパリ感は好きだが、
ぬるい湯に長くつかっているというのが苦手だ。
なので、温泉地へ旅行に行って、
ゆっくり温泉につかるというのは好きではない。
だから、風呂場は、機能一辺倒の狭い空間にした。
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大きな風呂場で、大きな浴槽にゆったりと海を眺めながら
入りたいと。出来れば、泡風呂が良いと。
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海は反対側である。
大きな風呂場は、冬は寒い。
大きな浴槽は、湯が沢山必要だ。
と説得に努めるが、OKは出ない。
そこで、せめて、ユニットバスにして、少しは豪華感を出すことにした。
しかし、専門業者の人に来てもらって、寸法を測ったら、
狭いので、ユニットバスは入らないとのこと。
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木の好きな人は、コウヤマキやヒノキの風呂桶や板壁にするが、
キレイなのは最初だけで、長期のメンテナンスを考えれば、
やはり、木は湿気に弱いので、ステンレスの浴槽やタイルの壁にした。
また、窓や入口の建具もアルミサッシを用いることにした。
風呂場は小部屋ながらも、色々な工程が詰まり、作業順序も複雑で
家作りの中では、最も難しい箇所だった。
詳細設計や施工図も描き直すことが多かった。
というのは、購入材料の種類が多く、施工も初めてというのがいくつかあって、
その取り合いなどは、頭の中や図面の上では、なかなか考えられなかった。
腰壁のブロック積みと柱、梁、天井にあたる2階床が完了し、
その後の工程は、墨出し~土盛り~配管~ブロック積み~床コンクリート打ち
~壁下地~壁モルタル~浴槽設置~窓・入口サッシ取り付け~タイル張り
~天井取り付けとなる。
2 基礎部分
基礎作業の土盛り、配水管設置、内壁ブロック積み、
基礎床コンクリート打ちについては、下水管埋設時に同時に済ませておいた。
洗い場の仕上り高さが、1階の床高より100mm下がりとなるように、
それぞれの高さ取りを慎重に行った。
浴槽からの排水を受ける配水管は、基礎床に溜った水を排水できるように
基礎床面と同レベルで切り取った。
また、浴槽の脚が載る部分は、注意深くレベリングを行った。
腰壁と基礎
上から見た 腰壁と基礎
浴槽の取付け位置
浴槽のレベリングと排水管
3 下地モルタルが最も難しい
壁はタイルをボンド貼りにするので、
下地はラス下地とブロック下地へセメントモルタルを塗る。
厚みは当初は、25mm程を考えていたが、
サッシ枠に合わせることにして30mmとした。これが厚い。
2度塗りでは、しんどいだろうから3度塗りとした。
モルタル配合は、
セメント:砂=2.5:1では、コテが重いので、2:1とした。
モルタルをラスに塗るには、結構強い力でコテを押さえつける必要がある。
こすりつけるようにする。ラスこすりという言葉の意味が良くわかった。
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腰壁の建築ブロックへののりが悪い。
ラスへの塗り厚と同じでは厚すぎるのだろう。
セメントを少し多めにして、なんとか塗り上げる。
2回目塗りの付着性を良くするために、釘で表面をひっかいておく。
このひっかき傷の溝にモルタルが入り込んで、
滑りを止めるのかと思っていたが、
それよりも、溝の横に盛り上がる砂のささくれ粒が有効に働くようだ。
モルタルが仕上げ面なら、それ程気にすることもないが、
仕上がりの壁面が垂直でなければ、タイルがうまく収まらない。
そのために、定規となる棒をとりつける必要がある。
この取り付け方を調べたがわからないので、自己流でやった。
天井から水糸を垂らして、それに合わせて細長い棒をスペーサーの薄板をあてて、
コンクリート釘で留めた。
これを各壁面の4辺に施し、2回目と3回目のモルタルを塗り上げていった。
定規棒はうまく取り付いたと思うのだが、
3回目のモルタル塗りがまずかったのか、仕上げ面が波打ってしまった。
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これが、その後のタイル貼りに大きく影響して、
タイルも凸凹が目立ってしまった。
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窓まぐさの裏面を塗るのも、大変難しかった。
天井に塗るのと同じで、塗ってもすぐ剥がれ落ちてくるのだ。
5mm以下の厚さで間をおいて、塗り重ねることで、何とかクリアーできた。
防水紙とリブラス
窓まぐさの定規棒
入隅部の定規棒
入口サッシ廻り
モルタル塗り作業
4 壁タイル貼り
下地モルタルの仕上がりが悪いので、とても貼りづらい。
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接着剤の厚みの範囲でうまく貼れる箇所もあるが、
そうでないところは、モルタルをタガネで削ったり、
接着剤に砂を混ぜて肉盛りしたりして貼っていく。
入隅部が最も難しく、直線目地が通らない。
接着剤は、アクリル系なので、水で洗えば落ちると思い、
素手で作業をしていたら、
手についた接着剤が、こびりついてとれないので、困った。
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二平面だけの台所の壁とは違って、
風呂場の壁は、四面で開口部があったりして、
カットするタイルがとても多い。
タイル割り付けがうまくいかなくて、
小さく切ったタイルを貼るところは、不細工さが目立ってしまう。
とても注意深く貼っていったつもりだが、
仕上がりを見ると、やはりタイルが凸凹している。
目地を入れれば、いくらかましになるだろうと思っていたら
それ程変わりばえしなかったのは、残念だった。
タイルと接着剤を購入
壁タイル塗り
壁タイル目地詰め
浴槽取付け前
壁タイル完了
5 浴槽の取り付け
浴槽はステンレスに塗装したものを選んだ。
ホーローがいいかなと思ったが、重量が100kgもあると知ってやめた。
とても一人では設置できない。
このステンレスの浴槽でも、取り付けるのに大変な苦労がいった。
浴槽は、タイルを張り終える少し前に取り付けることにした。
そうでないと、浴槽が汚れてしまうから。
ただ、本当に最終段階でうまく収まるかどうか不安だったので、
下地モルタル段階までで、3度程試し収めをして様子をみた。
この浴槽を風呂場の定位置へ収めるのが大変。
狭い入口を通って、狭い風呂場で、
大きな浴槽をどこにもぶつけないように、そっと置く。
チェックが済めば、逆に今度は、外へ運び出す。注意と力がいる作業だ。
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浴槽と壁との隙間は、タイルでふさぐことになり、
目地だけでふさがっていることになる。
以前、浴槽のまわりはすき間だらけだから、
浴槽を伝わって基礎床へ流れ落ちた水は、
排水口へ流れるようにしておくべきだと、
教えてもらったが、どうもこのことらしい。
はなはだ心もとないが、こういうものなのだろう。
ステンレス浴槽
浴槽の運搬
浴槽の取付け作業
6 床タイル張り
床タイルは、磁器質で固く小さいので、カットがめんどうだ。
ガラス切りで線を入れてから喰い切りで切る。少しずつ喰っていく。
かなり力がいる。少しずつ喰い切らないと、線からずれてしまう。
そのあと、ギザギザをグライダーで整え、砥石で擦って面取りする。
接着はセメントを水で溶いたノロとした。
ノロの固さ加減がわからず、初めは固すぎて粘着力がなく、
次は、軟らかすぎて安定しない。
うまくいったと思ったら最終。
軟らかすぎたところは、ノロが盛り上がってきてタイルの紙が濡れてきた。
目地が入らないので、削りとってスポンジでふきとる。
乾いてから、目地入れをしたが目地が深かった。
滑らないように少し落し目地にしたが、そうする必要はなかったようだ。
タイルの角が足裏に触って気になるし、
泥土の汚れが溜りやすいから、平目地にすべきだった。
床タイル目地詰め
床タイル完了
7 天井張り
天井は既製品を張ることにした。塩ビ製。
できる限り、石油化学製品を使わないようにしてきたが、
湿気に弱い木に替わるものは、今のところ、この塩ビ製になってしまう。
天井下地の桟木へ廻り縁を止めつけてから、天井板をはめ込めば、出来上がり。
とても、簡単に取り付けられる。
良く考えられているものだ。
天井裏へ入り込んだ湿気は、通風金網から外へ逃げるようにしてある。
天井下地
天井材
天井張り
天井張り最後の1枚
風呂場のサッシドアの取付け完了
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作業期間 2006年10月下旬 2007年7月下旬~9月上旬
作業日数 19日
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「海を見ながら、ゆったりと身体を伸ばして、お風呂にはいりたい。」
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”家で毎日温泉気分”という 妻の夢は、
「台所や居間から海がみたいんやろ?それなら、風呂場からは、間取り的に無理。」
「海を見ながらって、夜の海は真っ暗やで。それに、外から人に見られるで」
「大きな湯船は、お湯が沢山いるで。身体を縮めて入る位がよう暖まる」
「広い風呂場は、冬寒いで」
ケチな夫の合理的な意見に、あえなく負けてしまった。
それなら、機能的にも優れていて、
きっと、夫が施工するより綺麗にスッキリ仕上がり、
もしかしたら、夫が施工するより安くつくかもしれない、
ユニットバス案には、夫も賛成してくれたけれど、
これも、サイズ的に、不可能となった。
夫は、自分で張ってみたかった、
湿式タイル張りの風呂場を作ることができて、
嬉しいらしい。。。
夫がへたくそに張ったタイル張りのお風呂で、
ゆっくり、気持ちよく、くつろげるやろか。
タイルが剥げたり、欠けたりしたら、
掃除も大変やし、怪我までしそう。
お風呂から、水が廻って、家、腐らへん
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こちらをごらんください。