七曜工房みかん島

18年間の大三島暮らしに区切りをつけ、
滋賀大津湖西で、新たに木のクラフトと笛の工房
七曜工房を楽しみます

一人で建てる木組みの家~⑭外壁を張る前に

2008年04月12日 | 『一人で建てる木組みの家』
1 縦胴縁

木組みが出来上がっていてもその上からすぐに外壁の杉板を張ることはできない。
板の安定をはかるため、縦に胴縁をとりつける。
455㎜ピッチで60×45㎜の角材を浅い枘で釘固定する。
梁や軒桁に枘穴をあけるには、脚立にのっての上を向いての作業になる。
これが連続すると、首がだるくなり後頭部までもが痛くなってくる。
ほどほどに他のことをやりながら進める。
妻側になると、2階部分ははしごを使っての作業。
上で寸法を当っては、下へ降りて材を加工する。上り下りが激しい。
はしごの上り下りが多い時は、その日は何ともないが、
翌日にモモが筋肉痛でダルくなる。


縦胴縁 2階妻側


縦胴縁 開口部廻り


縦胴縁 枘穴彫りを手伝う息子


2 この時 地震が!!!

2006年6月12日午前5時過ぎ、寝ていると大きな揺れで目が覚めた。 
家がギシギシと鳴り、棚の上の飾り物が落ちた。
新築中の家を慌てて見に行った。
何ともなかった。
大分県が震源地だった。当地では震度4,5だった。
新築中のこの家は、軸組計算の上では、外壁と内壁の板を張って、
地震に耐えることになっている。
今は貫までの骨組が完成していて、震度4.5に耐えたということは、
これ以上の地震がきた時には、内外壁を取り付ければ貫構造で耐震性は充分と考えられる。
と言うのも、貫構造だけでは不安なので、
一部の壁に筋違いを入れて補強しようかと考え続けていた。
そういう構造の設計を見たことがあったから。
ただ貫の柔構造と筋違いの剛構造をチャンポンして問題はないかという疑問はあった。
しかし、この地震で筋違いは、入れないことに決めた。
貫だけで、耐えてくれ。


縦胴縁 西妻側完成
 
3.敷居と鴨居
 
外壁を張る前に、開口部の敷居と鴨居を取り付けておかねばならない。
敷鴨居の材は、杉よりも硬めのヒノキとした。一等材なので、材質はマチマチ。
目の通った節のできるだけ少ないものを選んで使っていく。
この頃は、丁度息子が来ていて、家作りや畑作業を数日手伝ってもらっていた。
敷鴨居の溝を切るカンナをインターネットで購入するつもりの旨を言うと、
ネットオークションで買うと得だと教えてくれた。
それではと、息子に頼む。
1回目はダメだったが、2回目でうまくゲットできた。
中古だが切り刃がついていて 定価の数分の1で購入できた。
送られてきた溝切りカンナの切れ味も上々だった。
息子はよくインターネットオークションで買い物をするという。
パソコンの普及は、ショッピングの形態を大きく変えてしまった
とつくづく感じる。

敷鴨居の溝幅は関西と関東では違うようだ。
関西では6分(18㎜)、関東では7分(21㎜)。
では四国ではどうかと、今の家の鴨居を測ってみると21㎜だった。
購入した溝切りの刃も21㎜だったので、
これで溝を切り、建具もこの寸法で作ることに。
柱と柱の間に収まる敷鴨居は、一本一本寸法が違う。
その位置に応じた寸法をとって加工する。
その寸法を測ることを、光り付けという。
材を柱の前に置いて、柱の形態をさし金で、写し取る。
柱は真直ぐに見えても、必ず少しはねじれている。
この少しのネジれをうまく写して加工すれば、
鴨居はすき間なく、柱にピタリと収まってくれるはずだ。 
光り付けの時、鴨居材を柱の鴨居位置に留めておく治具(市販品では鴨居ストッパーと呼ぶらしい)を
自作し、光り付けた線の通りに丸ノコで切るための自在定規も作った。
内部造作となると見え掛かりを大変気にするので、
すき間があかないように切り線にとても注意を払う必要がある。
それでもやはりすき間が出来てしまうことがある。
後は、修練のようだ。


敷鴨居加工中


敷鴨居加工完成



4.出窓
 
妻が台所に出窓を作って欲しいと言った時には、気易く引き受けたのだが、
こうしてやってみると、なんと厄介なものだ。
出窓サッシなら、ポンと取り付けるだけでできるのだが。
窓が、ホンの30㎝程外に出っ張るだけなのに、とても複雑な構造になってしまう。
柱と同寸法の出枠を組み、窓台と天井をつけ、内壁を張る。
同様に外側には、屋根庇をつけ、外壁を張る。
小部屋を一部屋作るようなものだ。 
部材が小さいので、加工は簡単に出来ると思っていたら、
なんのなんの。部材は小さくとも、組手は多いし、
部材が小さい方が加工がやりにくい分、手間どった。
枠を組み立ててから、敷鴨居を入れる。
窓台は水濡れに強いネコ土台の残材のベイヒバを使い、
天井側壁は、杉板を打ちつけられるように、胴縁や桟木をとりつけておく。
屋根は庇と同時に作っていく。


出窓 出枠


出窓 出枠の込栓止め



5 庇
 
屋根のガリバリウム波板を張り終えた時には、
これでやっと雨をしのぐことが出来たと、大いに安心した。
しかし、屋根完成後、数日して雨交じりの強い風が吹いたら、
妻側の裾の方がビショビショに濡れてしまった。
これでは、窓から雨が入ってしまうではないか。雨を防ぐための庇が必要だ。
小屋裏空間を広くとって棟が高いから、雨が吹き込むのかと思ったが、
妻側というのはこういうものらしい。
よく見ればどこの家にも、妻側の開口部には、庇がついている。
当初の設計では考えていなかった庇を作ることに。
腕木の取り付け方法をどうするかで困った。
当初の計画から庇を考えていれば、柱に枘穴加工をしているのだが、
変更追加の庇だから、あとから穴を開けるのは難しい。
腕木を切り欠いて、柱へ釘止めをすることで妥協する。
それでもどうしても柱に枘穴を開けなければならないところがあって、
ノミと玄能で枘穴をあけたが、うまく穴が開かず、
腕木を納める時にエラク苦労した。
庇は当初の設計から考えておくこと。
庇の屋根は、野地板の上にたいていが金属板を載せている。
これも同様にカラーのガルバリウム鋼板でも張ろうかと思ったが、
板葺きの方が、野趣があっておもしろそうなので金属は貼らないことに。
15㎜の杉板は雨ざらしにすれば、どれ程の耐久性があるのだろうか。


庇 腕木釘止め


庇 腕木込栓止め


庇 垂木


庇 野地板
 

庇 西妻側


6.一筋敷鴨居と雨戸かけ 
 
一筋敷鴨居というのは、普通の敷鴨居の外側に1本だけある
雨戸専用の敷鴨居のことである。
外壁は杉板を下見張りするので、柱と同一面にならないため、
一筋敷鴨居は開口部だけに取りつけることにした。
また雨戸は敷居の上をすべって戸袋に収まるという構造ではなく、
一筋敷鴨居から取りはずして、引っ掛け棒に引っ掛けておくという構造にした。
使わない時には、雨戸を守るために、戸袋があるようだか、
雨戸そのものがしっかりしていれば、戸袋などは不必要と思われるので、
使わない時は、外壁に立て掛けておくだけということにした。
そのためには、外壁を張る前に、引っ掛けを作っておく。
この引っ掛けは、L字型の棒なのだが、人が見たら、
何なのかが分からないようだ。
外壁面からニュと突き出た棒が4本、雨戸を引っ掛ければ、
その用途がよく分かるだろう。


一筋鴨居


一筋敷居


雨戸掛け 上


雨戸掛け 下


 外壁を張るまでの作業は、ほぼこれで終了。
 2006年6月11日から胴縁を取り付け始めて、
 2006年7月29日に雨戸かけが終了
 49日間のうち、大工仕事に専念できたのが、延べ30日。
 タマネギやジャガイモの収穫や、サツマイモの植付けや
 みかん畑の草刈りと摘果作業が忙しかったけれど

 60%程が、家作りに専念できている。
 この時期は梅雨なのだが、屋根が完成しているので、
 雨降りでも作業が出来たからだろう。



 2006年6月と7月


 付記 妻・ひろより
 
夫は、今頃、何を講釈しているのでしょうね。
 妻・ひろは、2年も前のことなので、何も思い出せない。
 しかも、随分地味な、おもしろくない作業だったようで、
 写真も撮る気にならなかったらしい。
 「なんで、撮ってくれなかった」と 
 夫が文句を言っているが、後の祭りである。

 家の骨組ができ、屋根が乗ったので、
 壁はすぐ張れると楽しみにしていたのに、
 えらく、下準備ばかりにかかっていた。
 
 息子が手元として、勤勉に手伝ってくれたけれど、
 自動カンナ機で、外壁材を、何十枚もカンナがけしてくれたけれど、
 
 ホンマに、「一人で建てる木組みの家」は辛気臭いわあ~~~



これまでの「一人で建てる木組みの家」はこちらです。

 
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