奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

朝の散策 ヒバリ、ジョウビタキほか

2021-03-16 19:56:39 | 奈良散策
奈良散策 第32弾


一昨日(3/14)の朝も散歩に出かけました。また、畑とため池巡りです。







家からしばらく歩いて、いつものため池の近くに行きました。そこではヒバリとホオアカを見かける場所です。この日はヒバリが餌をついばんでいました。







ヨシ原で飛び回っている鳥を写そうと粘ったのですが、なんせ遠くてうまく写りません。でも、たぶん、オオジュリンだと思います。







ため池の横にはいつもジョウビタキがいます。だいたい同じ場所で活動しているのでしょうね。この日もいました。





ため池の横ではスイセンが咲いていました。



帰りに同じ場所でまたジョウビタキを見ました。



金魚の養魚池ではこんなすだれのようなもので金魚を追いやるのですね。知りませんでした。

虫を調べる コガタルリハムシ

2021-03-16 17:39:27 | 虫を調べる
先日、ギシギシの葉にたくさんの紺色のハムシがいるのに気が付きました。「原色日本甲虫図鑑IV」を見ると、ギシギシの葉につくのはコガタルリハムシ Gastrophysa atrocyanea の可能性があるようです。それで、1匹採集してきて検索をしてみました。引っ越してから初めて顕微鏡を使って検索を試みたことになります。でも、引っ越しで器具をどこに入れたか分からなくなっているものが多く、あちこち引っ掻き回してやっと器具を揃えました。今度は顕微鏡に取り付けたカメラがうまく動きません。結局、リモコンがときどき不良になるのが原因であることが分かり、リモコンを買い直しました。実体顕微鏡にはリング照明用のLEDを取り付けているのですが、これの取り付け方が悪くて、写真が全体に暗くなってしまいました。失敗続きでしたが、なんとかかんとか一通り写真を撮ることができました。



採集してきたハムシはこんな虫です。体長は5.1mm。やや小さなハムシです。ハムシの検索には次の本や論文を用いました。

[1] 林匡夫ほか編、「原色日本甲虫図鑑IV」、保育社 (2002).
[2] S. Kimoto, “The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. V”, J. Fac. Agr., Kyushu Univ. 13, 263 (1964).(ここからダウンロードできます)

[1]は亜科の検索、[2]は属の検索に用いました。検索の結果、予想通りハムシ亜科Gastrophysa属になりました。日本産のこの属にはコガタルリハムシ1種なので、コガタルリハムシで間違いないと思われます。検索の手順を写真で確かめていきたいと思います。

①頭部は正常、頭頂は特に前方に突出することなく、口器は頭部の先端に位置する
②触角はその基部を前頭または頭頂によって広く隔てられる
③頭部は前胸の中に強く引き込まれ、通常複眼は前胸背板の前縁にほとんど相接し、場合によると完全に覆われる。複眼の後方は強くくびれることはなく、前胸背板の側縁は通常明瞭な縁取りを有するが、まれにこれを欠く場合もある
④前胸側板に明瞭な触角溝を欠く
⑤腹部の中間3節は中央部でくびれない
⑥頭楯会合線は明瞭、跗節第3節は前端部が弱く2裂するか、まったく2裂しない。前胸背板側縁は常に明瞭に縁どられる  ハムシ亜科 Chrysonzelinae
⑦前基節腔は後方に開く
⑧跗節爪は単純
⑨上翅側片の内側境界には縁毛を具えない
⑩鞘翅は乱れた点刻または不規則な点刻列がある
⑪脛節先端には歯のように尖った突起を具える  Gastrophysa

検索は上記のような事項を順に確かめていきます。次の写真はほぼ検索順に並べていますが、一部、順不同になっているところもあります。



最初は頭部を正面から撮った写真です。頭部には特に異常は感じられないので、①はOKでしょう。



この写真も頭部を斜め前から撮った写真です。触角は頭頂により広く隔てられています。これで②はOKです。ついでに⑥の前半も確かめてみます。頭楯は先端にある細い部分だと思いますが、頭盾と前頭を区別する会合線は明瞭です。



これは頭部と胸部を背から撮った写真です。頭部は前胸にすっぽりはまるような形をしています。さらに、複眼の後方にくびれはありませんし、前胸背板側縁には縁取りがあります。③では縁取りがあるものと、欠くものの両方を認めていますが、⑥ではこのうち縁取りのあるものだけに限定しています。



次は前胸を腹側から写したものです。前胸側板は矢印で示した部分ですが、特に、触角溝は見当たりません。また、基節腔は基節をしまう凹みを意味しますが、その凹みの後方は矢印のように空いています。



⑤は腹部中央部にくびれのあるナガツツハムシ亜科とツツハムシ亜科を除外する項目です。特にくびれは見当たりません。



これは脚の先端部分を腹側と背側から写したものですが、跗節第3節の前端部は軽く2裂しているだけです。



これは跗節爪です。この写真だけ、生物顕微鏡に10倍の対物鏡を取り付けて撮りました。特に異常はありません。



この写真がうまく撮れなかったのですが、鞘翅の縁に上翅側片という折り返した部分があります。その内縁に毛が生えているかどうかですが、写真で見る限り、生えていません。



さらに、鞘翅の点刻は特に列状にはなっていません。



最後は脚の脛節末端部を写したものですが、先端がかなり突き出しています(矢印)。腹側から撮った写真を載せておきますが、その部分はかなり狭い突起です。たぶん、これを歯状と表現したのではないかと思います。この最後の項目がやや怪しいのですが、これが合っているとGastrophysa属になります。ほかの属と比較してみないとはっきりしたことは言えませんが、ギシギシを食草とすることを考え合わせるとまず間違いないのではと思っています。なお、「日本列島の甲虫全種目録 (2020/2021年)」によると、コガタルリハムシの学名はGastrophysa (Gastrophysa) mannerheimiのようになっていました。