越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

山形の番楽

2008年01月16日 | 小説
この連休中に、明治大学の主催で、「番楽」を紹介する公開文化講座を山形市で開いた。人文科学研究所の委員をしている関係で、公開講座の企画をたてねばならず、所長の居駒永幸先生(経営学部教授、民俗学)に講師になってもらうことにして、先生のご専門の「番楽」の紹介にあいなった。

番楽は、山形では北部の6カ所でしか伝承されていない民族芸能であるため、おなじ山形でも南のほうでは知られていない。600年以上前に、山伏によって里の農民に伝えられたという歴史を持つが、近年の農業の衰退で、踊り手も大幅に減少ぎみ。

コメンテーターをしてくださった東北芸術工科大学の菊地和博先生によれば、青森の東通村の能舞や岩手のはやちね神楽なども、山形の番楽と同類と見るべきであり(とりわけ、魔除けの「獅子舞」という演目に共通性があり)、それらはみな紀州の熊野系の山伏の伝えた芸能だという。

公開講座では、山形県金山町の稲沢番楽保存会による実演もあった。子宝と子孫繁栄を祈願するために、仮面をつけた男の踊り手がペニスに似せた巨大な棒(ヘンゾボ)を持って、それを若い女性たちに握らせる「おかし舞」や、能や歌舞伎の「道成寺」に通じる「鐘巻き」など、普段見られない舞台を楽しんだ。雪深い山里だからこそ、こういう民俗芸能がいまなお息づいているのだろう。



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