越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

ジョナサン・フランゼン『コレクションズ』(7)

2011年09月21日 | 小説
  後期資本主義社会でいちばんの悩みは、ゴミ問題だ。

 「もったいない」文化とは対極にある「使い捨て」文化の産物。

 便利さや快適さを最優先する「先進国」の消費主義は、大量のプラスティック商品(ペットボトルや包装袋やCDやケータイ)を開発してきた。

 その結果、それに比例するだけの廃棄物がうまれるようになった。

 現代において最悪のゴミは、原子力発電所の「核廃棄物」プルトニウムをおいて他にない。

 ドン・デリーロは『アンダーワールド』(一九九七年)でこうした核廃棄物処理の際に現われる「強者」のエゴイズムを描いて消費主義社会を風刺した。

 一方、フランゼンの『コレクションズ』には核廃棄処理の問題は出てこないが、デニースの雇い主ブライアンの妻で、デニースがレスビアン関係を結ぶロビンという女性に、消費主義に甘んじない生き方を体現させている。

 彼女は貧民地区の子どもたちを雇って、有機菜園の実験農場を行ない、その収益を分配しようとする。

 それは、平等主義のユートピアの創造であり、エコロジカルな「リサイクリング(再利用)」の思想の実現である。

 カトリックのロビンは「聖ユダ」(ランバート家の故郷「セント・ジュード」の名前の由来)に惹かれるという。

 見込みのない目標(理想)に打ち込む人を守護する聖人だから。

(つづく)
 
 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿