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書評 中村文則『王国』(1)

2012年02月18日 | 書評

「月の王」との邂逅  中村文則『王国』(河出書房新社)

越川芳明

  澁澤龍彦がいみじくも「奇抜な短篇」と呼んだ、アポリネールによる「月の王」という作品がある。

 アポリネールらしき人物がドイツの山岳地帯を放浪し、樅の森をさまよい、

 ある洞窟の中につくられた地下宮殿で、ルートヴィヒ二世と邂逅する、

 不思議な一夜の出来事が語られている。

 澁澤はエッセイの中で、

 アポリネールがバイエルンの狂王ルートヴィヒ二世を「月の王」と呼んだのはルイ太陽王を意識したからにちがいない、と述べる。

 そして、「一方が現世の絶対権力者、他方が夢の世界、夜の世界に生きる王であることは、わざわざ説明するまでもないだろう」と付け加える

(つづく)

 


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